融和演出、懸案棚上げ 日中首脳「新時代」アピール

西日本新聞 総合面 川原田 健雄 鶴 加寿子

 23日に北京で行われた日中首脳会談は、来春に予定する中国の習近平国家主席の国賓来日に向けた「地ならし」に主眼が置かれた。安倍晋三首相は友好ムードの演出に腐心しつつ、日本国内の保守層に配慮。人権抑圧が続く香港情勢では、習氏にあえて苦言を呈してみせた。米国との対立を抱える習氏も対日関係の改善を重視した。双方が沖縄県・尖閣諸島周辺への領海侵入などの懸案に深入りせず、「日中新時代」をアピールした。

日本…習氏来日へ地ならし

 「お互いの理解が深まりつつあると感じている」「私たちの手で日中関係を次なる高みに引き上げたい」。北京の人民大会堂で習氏の出迎えを受けた安倍氏は冒頭、トップ同士の信頼関係をアピールする言葉を並べた。

 四川省成都で24日に開催される日中韓首脳会談には、中国から李克強首相が出席する。その前にわざわざ北京に立ち寄った安倍氏に、日中関係改善の外交成果をアピールする狙いがあるのは明らかだ。ただ、習氏を国賓として迎えることには国内の保守層に異論が少なくない。自民党の保守系グループは反対の決議文を官邸に提出している。

 日本政府の説明によると、会談で香港情勢を取り上げた安倍氏は「自由、人権の尊重や法の支配といった普遍的な価値を重視している」と言及した。あえて習氏に直接苦言を呈したのは、国内保守層の反発を和らげるため。国賓来日の「地ならし」を意識した発言は、習氏も織り込み済みだったとみられる。

 もっとも、日中間の懸案は今も横たわったままだ。習氏は会談で「今年、中日関係は持続的に改善し、発展している」と述べたが、尖閣諸島周辺の接続水域で確認された中国公船は今年1077隻に上り、過去最多。スパイ行為に関わったなどとして中国国内で民間の日本人が拘束される事態も続いている。

 安倍氏は会談でこうした事態に中国側の対応を求めたが、「東シナ海を平和協力友好の海とする」などと従来の原則論を確認するにとどまった。両首脳の政治的思惑が一致した関係改善はムード先行。内外の情勢変化でいつ再び悪化に向かわないとも限らず、火種はくすぶり続ける。 (北京・鶴加寿子)

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