たった一人のサンタクロースが世界中の子どもたちに一晩で…

西日本新聞 オピニオン面

 たった一人のサンタクロースが世界中の子どもたちに一晩で贈り物を届けるのは、本当に可能なのか。この疑問に答えるのが伊坂幸太郎さんの短編「一人では無理がある」だ

▼この小説によれば「サンタクロースなる人物は存在しない。が、仕組みは存在する」。実は会社のような組織があり、プレゼント選びやその手配、届け先の情報管理などをそれぞれの部署でやっている。イブの夜には「アンカー」部の社員たちが、飛行するトナカイを駆って子どもたちにプレゼントを届ける

▼この会社の配達対象は「何らかの事情で、親からプレゼントをもらうことのできない子どもたち」だ。社員のモットーは「サンタクロースは子供を見離してはいけない!」

▼この小説には発注ミスばかりする若い社員が登場するが、彼のミスによる少し変な贈り物が、結果的に虐待を受けている子どもや窮地に立たされた母子を救う。伊坂さんらしい風変わりなファンタジーだ

▼小説のテーマを語るなど無粋の極みだが、そこに込められているのは、困難な境遇にある子どもを社会全体で見守りたい、というメッセージではなかろうか。虐待、親の育児放棄、貧困-胸の痛むニュースが相次ぐ。自分の子ではなくても、何かできることはないか

▼支援団体に寄付するのもいい。元気のない近所の子どもに声をかけるのでもいい。何かできたら、あなた自身がサンタクロースになる。

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