私も困っている…SNS"捨て垢"からの中傷、被害の訴え続々 専門家「投稿の画像保存を」

西日本新聞 押川 知美

 「今すぐ消えろ!」―。会員制交流サイト(SNS)で、架空の人物として作られた「捨て垢(すてあか=『捨てアカウント』の略)」からの誹謗(ひぼう)中傷について報じた西日本新聞「あなたの特命取材班」に、「私も同じ被害に遭って困っている」「毎日恐怖です」などと同様の被害を訴える声が続々と届いている。発信者の特定が難しい場合、どう対処すればいいのか。あらためて専門家に聞いた。

 西日本地域在住で歌やダンスのネット配信をしている20代の女性は、ある日突然、短文投稿サイトのツイッターに繰り返し、知らないアカウントから「消えろ!」などと書き込みやメッセージが送られるようになった。多いときで一晩で20通以上。このアカウントから受信を拒否する設定をしても、また別のアカウントから同様のメッセージが頻繁に届く。次々に新しいアカウントが中傷してくる状況に、女性は「相手の顔は見えず、いつ実害を加えられるかもしれないと毎日恐怖です」と涙ぐむ。

 大分県内に住む男性も、民事訴訟を巡って、匿名のアカウントからSNS上に、個人情報や名誉毀損(きそん)にあたる内容を書き込まれたという。

 ネット配信業をしている福岡県内の人物は、自分の活動に批判的な人物によって、かつて自分が書いていたブログから実名や住所まで特定され、誹謗中傷や脅迫を受けたという。警察に相談したものの、十分な対応をしてもらえず「また何かありましたら相談ください」と言われただけだったという。

 関東地区に住む女性も、ブログを公開するたびに、否定的な書き込みが続いた。嫌がらせや脅迫メールの件数は8か月で400通を超えた。「殺す」という文言もあったが「実際の事件になっていないため、警察では応じてもらえなかった」と話す。

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 ネットに誹謗中傷の書き込みをされた場合、サイト運営者に対してプロバイダ責任制限法に基づく発信者情報開示請求ができる。書き込みが名誉毀損罪や侮辱罪に当たると判断されれば、相手に3年以下の懲役もしくは禁錮が科せられる可能性がある。また、民事訴訟で損害賠償を求めることもできる。

 ただ、SNSでは主に使用するアカウントとは別に匿名アカウントを取得し、情報発信や交流をするケースが多い。「捨て垢」はいつでも削除できることが前提で、個人を特定できる情報は乏しい。アカウントを削除された場合、個人の特定は極めて難しくなる。

 ツイッターやインスタグラムなどの主要なSNSでは、ヘイトスピーチや差別的内容▽攻撃的または脅迫行為―などが報告により確認できれば、アカウントの凍結などを行う。だが、投稿が残っていないと、報告できない。

 被害相談を受ける総務省の「インターネット違法・有害情報相談センター」でも、対応は書き込みが残っている場合に限られる。桑子博行センター長は「投稿画像を保存して証拠を残してほしい」と助言する。

 ネット上の法律相談サイト「IT弁護士ナビ」では、ITやネットの問題に詳しい弁護士を、地域や内容に応じて紹介している。担当者は「1人でも多くの誹謗中傷被害に悩む人に、弁護士に相談・依頼するという解決策を知ってほしい」と話す。

 厚生労働省の研究チームが昨年8月に発表した調査によると、LINEなどの無料通信アプリの利用率は高校生男子で85~90%、女子は92~96%。ツイッターの日本での月間利用者は2017年10月に4500万人を超えた。若者の間でSNSはすでに不可欠な存在になっており、被害に悩む女性は「執拗(しつよう)な嫌がらせはSNSを使う権利まで奪おうとする行為。絶対にやめてほしい」と訴える。

 ジャーナリストの津田大介さんは11月、福岡県春日市でネット上の人権侵害について講演。海外ではネット上のヘイトスピーチに対して法規制が進んでいることを紹介する一方で、「規制しすぎると、国家が全ての情報を管理することになる。言論の自由とのバランスを常に議論していくことが必要だ」とも指摘した。(押川知美)

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