溺れる女性に「絶対助ける」 北九州の68歳大工、4度目の人命救助

西日本新聞 北九州版 白波 宏野

 「おじちゃんが絶対助けてやるぞ」。北九州市小倉南区の大工、桂口春男さん(68)は門司港で溺れている女性に大声で叫んだ。釣り網を投げ入れてつかまらせ、10分間近く網を引っ張って岸にたぐり寄せて助けた。実は過去に何度も山で遭難者を救助している。体調を崩して山に登れず、門司港で海釣りをしている時、溺れる女性を発見した。「私が助ける運命だったのか…」と驚いている。

 9月10日朝、桂口さんは門司港海岸の堤防で釣り糸を垂れていた。2時間ほどしても釣れず、双眼鏡で対岸の下関の景色を眺めていた。釣りを再開すると、「助けて」「怖い」と叫ぶ女性の声が聞こえた。双眼鏡で探すと、女性が海中で必死にもがいていた。

 桂口さんは約5メートルある釣り網を持って走り、堤防から投げて女性につかませた。「がんばれ」と声を掛けながら、携帯電話で110番。駆け付けた作業員らと救助した。女性は自殺を図り、自ら海に飛び込んだという。桂口さんは中年とみられる女性に「こんなにたくさんの人が助けてくれた命。大事にしなきゃいけない」と諭した。

 9月下旬、門司署から人命救助の感謝状を受け取り、「自分がそこへ行くように決まっていたような気がする」と不思議がった。

 6月に心臓病を患って北九州市の病院に入院。退院後の8月に脳梗塞を発症し、緊急入院した。幸い後遺症はなく、9月10日は趣味の登山に出掛けようと思っていた。だが、前日の心臓病の検査で医師から登山は心臓への負担が重すぎると言われ、泣く泣く断念。友人を誘って釣りに行くことにした。

 桂口さんは小倉南区母原出身。16歳で大工の棟梁(とうりょう)に弟子入りし、50年以上、地元で大工として働いてきた。20年前に本格的に登山を始め、九州各地の山に挑戦してきた。故郷の山は幼い頃からの遊び場で自分の庭のように知り尽くしている。遭難者が出れば警察や消防の捜索に協力してきた。

 2016年10月、近くの山で遭難者が出たと小倉南署から連絡を受けた。消防隊が遭難者を見つけたと知って帰路に付いたが、「消防隊員も道が分からなくなった」と再び連絡があり、日が暮れかかる山を登り、無線で消防隊員と連絡を取りながら遭難者を救出した。

 ほかにも2回、山での人命救助で同署から感謝状を受け取り、今年11月にも行方不明の高齢女性を同区の山で発見して、感謝状を受け取った。

 「人のために我慢や努力をするのは結局は自分のためになる」と信じ、町内会長など自治会の役職も歴任してきた。「これからも自分にできることを最後までやり続ける」と決意を語った。 (白波宏野)

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