日韓首脳譲らず離れず 徴用工、輸出規制巡り駆け引き

西日本新聞 総合面 池田 郷 鶴 加寿子

 冷え切った日韓関係に対話の機運が芽生えた。安倍晋三首相と韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領は24日、中国・成都で1年3カ月ぶりに会談。互いの重要性を確認し、対話による懸案解決の意思を明確にした。ただ、もつれた糸は簡単にほどけない。日本側が元徴用工訴訟問題の解決を迫る一方、韓国側は日本の対韓輸出規制の撤回を要求した。双方が国内世論をにらみ、相手が先に譲歩しないと動けないジレンマに陥っているようにも映る。

 「三国志」ゆかりの四川省・成都のホテル。「重要な日韓関係をぜひ改善したい」。会談の冒頭、首相が呼び掛けると、文氏は首相の在任記録が歴代最長となったことや、「令和」初の首相になったことに祝意を示した。

 互いに不信感を募らせた両首脳が会談に踏み切ったのは、両国関係が抜き差しならないレベルまで悪化したからだ。双方を訪問する観光客は激減し、民間交流も中止が相次ぐ。首相は会談で「こういう時だからこそ議員間、経済界、地域間、国民間、若者同士の交流が重要だ」と呼び掛け、文氏も「全面的に賛同する」と応じた。

 両首脳は対話を重ねることで懸案の解決を図ることでも一致した。「報復の連鎖」を断ち切り、これ以上の関係悪化を食い止めるトップの決意表明だった。

■現金化

 だが議論が具体的なテーマに移ると、雰囲気は一変した。同席した日本政府関係者によると、会場に「張り詰めた空気」が漂ったという。

 首相が切り出したのは、関係悪化の引き金となった元徴用工訴訟問題だった。韓国最高裁が日本企業に賠償を命じた判決は、1965年の日韓請求権協定に反するとの立場を改めて表明。「法的基盤の根本に関わる。国家として日韓関係を健全に戻すよう求める」と迫った。

 文氏から具体的な提案はなかった。この問題の解決に向け、日韓の企業と個人から集めた寄付金を元徴用工らに支給するという韓国国会議長が提出した法案は、成立の見通しが立っていない。原告などの反発も強い。

 訴訟で差し押さえられた日本企業の資産売却手続きが完了し、現金化されれば対立は決定的になる。首相はこうした事態の回避も訴えたが、日本側には「来年4月の韓国総選挙まで文氏は動けないのではないか」と悲観論が漂う。

■総選挙

 一方、韓国側は日本の対韓輸出規制が関係悪化を決定的にしたとみる。元徴用工問題の報復であり、政府や世論は「国家の威信に関わる問題」(韓国外交筋)と反発。文氏にとって輸出規制の撤回は、今回の会談の「核心議題」(聯合ニュース)だった。

 だが首相はつれなかった。会談で文氏は日韓貿易管理担当の局長級会合の再開を評価し、誘い水を向けたが、首相は言及を避けた。日本政府は対韓輸出規制をあくまでも安全保障上の措置だと説明してきた。元徴用工問題とセットで解決すべき課題と捉えられることを嫌った。

 文氏が元徴用工問題の「早期解決」に触れた狙いも、輸出規制で日本側から前向きな対応を引き出すことにある。政権としては来年4月の総選挙までに事態を打開し、外交成果をアピールする思惑もある。

 「率直な対話を交わすのが最大の力」と呼び掛けた文氏だが、双方の思惑はすれ違い、歩み寄りはなお遠い。会談後、大統領府関係者は「具体的な期限は言えないが、このまま長引かせるわけにはいかない」と焦りもにじませた。 (成都・池田郷、鶴加寿子)

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