検察、港湾利権狙いを強調 元組合長射殺事件 【工藤会トップ裁判】

西日本新聞 社会面

〈マンスリー報告 12月〉弁護側、調書の信用性疑う

 特定危険指定暴力団工藤会トップで総裁の野村悟被告(73)とナンバー2の会長田上不美夫被告(63)の12月の公判は、元漁協組合長射殺事件(1998年)に焦点が当てられ証人尋問が続いた。検察側は、北九州市が大規模港湾事業を公表して以降、同会が利権を狙って元組合長の親族にも接触を図っていたと強調。弁護側は、検察官調書の作成過程における問題点を追及し、信用性に疑問を呈した。

親族もターゲット

 ≪12月2~23日に7回の公判が開かれ、計11人が証人として出廷。96年に市が総事業費1千億円の響灘ハブポート構想を公表後、元組合長の弟らも会側から面会要求を受けた。弟は2013年12月に何者かに射殺=未解決=された≫

 元市職員 ハブポート構想を公表後、地元漁協の漁業補償などについて話し合うため元組合長の弟と交渉した。上司からは「(弟が交渉の)キーパーソン」と言われた。交渉は短期間でまとめる必要があったが、その過程で弟の自宅への発砲事件があり、妥結できるのか、と思った。

 結局、1997年10月中旬に妥結。弟とは数十回にわたる交渉を続け、補償額については一発でまとまった。

 副検事 2002年に元組合長の弟の供述調書を作成。1997年1月ごろ、弟が知人から「(同会系)組長が会いたがっている。会ってやってくれ」と面会要求をされたと語っていた。この組長は同じ頃、元組合長の長男にも漁協利権に関する要求をしており、同一人物からの要求でもあり弟の証言には合理性があると判断した。

 元組合長のおい 元組合長の弟の息子。父とともに港湾事業に関係する会社を経営してきた。

 同年に会社や車のガラスが割られ、その年の夏ごろに会側から脅迫電話があった。同年9月には父の自宅と車に、2007年には会社と私の自宅に発砲があった。父が殺害された後、会社に「閉鎖しろ」との脅迫文が届いた。

 弁護側 犯人が分かっていない事件については関連性がない。解決していない事件で(審理中の事件を)立証することは許されない。

 検察官(1) 事件前、野村被告や別の指定暴力団幹部と会食したという男性の供述調書を作成。男性は市内の砂利事業への参入を目指していたが、野村被告は「砂利事業は元組合長が絡んでいるから大変ですよ。あそこには私どもは何も絡めない」と発言したという。

拳銃暴発の供述も

 ≪射殺事件の実行犯は事件の前日に拳銃を暴発させ、直前に喫茶店に立ち寄っていた-。これらの供述をした関係者は死亡しているため、供述調書を作成した検察官が証言台に立った≫

 検察官(2) 実行犯の知人女性の供述調書を作成。女性は「事件当日、実行犯に呼び出されてファミリーレストランに行き、実行犯は見慣れないコートを着ていた。その後、実行犯とホテルを転々とした」と話した。

 事件前日については「帰宅した際、実行犯が壁を道具で触っていて、どうしたのか尋ねたら『拳銃が暴発した』と話した。弾丸を取り出すことはできず、壁にクロスを貼った」と述べた。女性は「実行犯にとって決定的証拠になると自分の身が危ない」と言った。へそを曲げられてはいけないと思い、その段階では(女性宅の検証は)保留した。

 検察官(3) 検察官(2)の引き継ぎを受け、実行犯の知人女性の供述調書を作成。女性宅の検証は最終的に03年6月に行った。女性にも立ち会ってもらい、壁から弾丸が見つかった。女性は「弾丸も出たので検察に協力する」と話した。

 検察官(4) 実行犯が事件直前に立ち寄った喫茶店の男性店主の供述調書を作成。店主は「事件当日、実行犯が男と一緒に来店し、事件直前に出て行った。その後、事件現場方面が騒がしくなった」と説明した。事件後に関しては「別の組員が来店し『実行犯が店にいた時間帯をずらしてほしい』と依頼され、弁護士の事務所で書面にサインした」と供述した。

響いた銃声

 ≪元組合長は1998年2月18日午後7時すぎ、同市小倉北区のキャバレー前で銃撃され、死亡した。検察側は目撃者の証言を基に、当時の状況を浮かび上がらせようとした≫

 事件時、元組合長と一緒にいた男性 キャバレー前で車から降りた後、「パンパン」という音が聞こえた。背の低い男が元組合長の方を向き、両手を突き出していた。何を握っていたかは分からなかったが、白い煙が見えた。元組合長の後ろから背の高い男も走ってきた。銃声は4発聞こえたと思う。

 元組合長が店に行く時間は開店直後の午後7時ごろが多かった。

 現場に居合わせた女性 「パーン」という音を聞き、倒れそうになる男の人と、拳銃のようなものを持っている男の人を見た。発砲事件だと分かった。現場から白い車が急発進して逃げた。ナンバープレートを覚え、警察官に伝えた。

「指紋は残すな」

 ≪射殺事件後、実行犯は白の乗用車で逃走したとされる。この車を事件前に盗んだ男らも証言し、盗難に至る経緯を語った≫

 窃盗に関与した男(1) 98年1~2月、(事件の見届け役とされる組員の親交者である)知人から「車がいると頼まれたので持ってきて(盗んできて)くれ。やばいことに使うかもしれないので指紋は残さずに」と連絡を受けた。指示に従い、知人(男(2))と大分ナンバーのプレートと白い乗用車を盗み、指定された同区内の駐車場に置いた。見届け役とされる男とは面識があり、やくざと認識していた。

 窃盗に関与した男(2) 男(1)と知人と3人で車両窃盗を繰り返し、盗難車を売却していたが、一度だけ売らなかったことがある。その際、車は同区内の駐車場に置いた。銃撃事件を報道で知り、自分たちが盗んだ車だと思った。

捜査は万全か

 ≪検察側は射殺事件の詳細を示す一方、弁護側は供述調書作成時の取り調べ状況を追及。検察側の聴取時に警察官2人が同席していたことも明らかになり、任意性などに問題があると主張した≫

 弁護側 入院していた喫茶店の店主の聴取について、警察官2人が立ち会った。問題ではないのか。

 検察官(4) 店主が気難しい人ということで、警察官にアポイントメントも同席することもお願いした。今考えると配慮が足りなかったと思う。

 弁護側 主治医に聴取していいか確認はしたのか。

 検察官(4) 聞いてません。

 弁護側 野村被告と会食した男性について、2014年に警察官調書が作成され、同じ日に検察官調書も作られている。事件からかなりの時間が経過しており、聴取日を変えることで正確な記憶を思い出す可能性もあったのではないか。日を変えようとは思わなかったのか。

 検察官(1) (日にちを変えることは)できなかった。男性からこの日にしてくれと言ってきた。(工藤会トップ裁判取材班)

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【ワードBOX】元漁協組合長射殺事件

 1998年2月18日夜、北九州市小倉北区の路上で、同市若松区の元脇之浦漁協組合長=当時(70)=が頭や胸を撃たれ死亡した。福岡県警は2002年、殺人容疑などで田上不美夫被告ら4人を逮捕、田上被告のみ不起訴となった。裁判では実行犯ら組幹部2人の実刑判決と、組幹部1人の無罪が確定。県警は14年9月、事件に関与した疑いが強まったとして、同容疑で野村悟被告と田上被告を逮捕した。

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