松浦市に「鬼小屋」完成 地域住民と炎囲み小宴楽しむ

西日本新聞 長崎・佐世保版 福田 章

 長崎県松浦市調川町松山田免の田んぼに冬の風物詩の鬼小屋が完成した。自営業の久保川志丸さん(69)が20年ほど前から手作りする高さ約6・5メートルのわら小屋。来年1月7日の鬼火たきで灰になるまで、威容を楽しめる。「落成記念」の小宴に招かれ、いそいそと出掛けた。

 師走に入り、着信音とともにスマートフォンの画面に久保川さんの名前が表示されると、にわかに心温かい気持ちになる。田んぼの真ん中の「小宇宙」で炎を囲み、鍋をつついてお酒を酌み交わす場面が思い浮かぶからだ。松浦勤務5年目で、地元では神出鬼没の会社員と知られる山本真也さん(48)も誘った。

 鬼小屋に着いたのは午後5時45分。辺りは真っ暗。扉を外し「1年ぶりにこんばんは。友だちを連れてまいりました」とあいさつすると、「おお、待っとったよ。そん友だちさんば知っとる人のおらすばい」と久保川さん。先客の夫婦2組の中に、山本さんと縁のある人がいた。誰言うともなく「世間な狭かね」。

 鬼小屋の中は広く、15畳はある。3日をかけクレーン車を使い、わら300束と竹160本を組み上げた労作だ。久保川さんは使命感に突き動かされ、多忙の合間を縫って作る。つかの間、その眺めと交流空間が住民に喜ばれ、燃えて焼かれて、また作る。男の美学なのだろう。

 赤々とした炎の上で、海山の幸が焼けてきた。焼酎を割る湯も、やかんから注ぐと香りが際立つようだ。そろそろ、鍋の登場。ここでは談笑を「暖笑」と表現したくなる。

 「去年来た男が還暦で再婚したらしか」「あん男も、よう頑張るね」「そがん年なら再々婚じゃなかつか」-。とりとめのない話も、ここに漂う濃密な空気にはふさわしい。炎で頬が火照り、酔いが加速する。ぼちぼち、おいとましよう。

 帰路に山本さんがこう漏らした。

 「わらの匂いに包まれ、たき火のそばで飲むビールは冷たく、あぶった魚の塩加減もよく、本数が進んだ。人と人との距離が近い松浦を凝縮したような心地よい時間でした。それにしても短期間で炎上するのがもったいない」(福田章)

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