鹿児島県で高校教師や図書館長を務めつつ動物文学を執筆した椋鳩十…

西日本新聞 オピニオン面

 鹿児島県で高校教師や図書館長を務めつつ動物文学を執筆した椋鳩十。文学を志したのは中学時代の若き恩師2人の影響という

▼早稲田大を出たての国語教師は教室でトルストイを読み聞かせ、文学へいざなった。椋が70代半ばで全集を出版すると、60年も保管していた椋の中2の作文と絵を送ってくれた

▼東京帝大生のまま着任した英語教師は、椋ら文学好きの生徒10人を「またたく星の群れ」と名付けた。放課後にガリ版で刷った英文の詩を訳し、「生きた心で自然を見よ」と説いた

▼こんなふうに若者を光へと導くのが教師であろうが、今はなり手不足が深刻。昨年度の公立小学校教員採用試験の競争率がバブル期と並び過去最低になった。九州では福岡県1・3倍、佐賀県1・6倍の低さ。教員の質の確保が心配になる

▼背景にはいじめや過激な保護者への対応の負担もあろう。何より、部活動の指導や採点でいくら残業をしても残業代が支払われない変な法律が存在する。これでは先生があまりにかわいそうだ

▼それでも自分は教えたいという若者にこの逸話を。1987年末、病床の椋に富山の小学教諭から手紙が。椋の作品の解釈を巡り児童の意見が割れ困っているという。椋は「今なら2学期に間に合う」と無理を押して返信し、間もなく逝く。動かしたのは教育者としての誇りか情熱か。きょうは教師の在り方を考えさせられる椋の命日である。

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