「 ガウディが見ていた方向を見るんです」 彫刻家・外尾悦郎さん講演

西日本新聞 北九州版 石黒 雅史

 スペイン・バルセロナで建築が続くサグラダ・ファミリア教会の芸術工房監督、彫刻家の外尾悦郎さん(66)が10日、福岡県行橋市で「サグラダ・ファミリアにおける彫刻の役割」と題して講演した。作品画像をスクリーンに映して解説後、質問コーナーにも時間を割いた。アントニ・ガウディやサグラダ・ファミリアに対する外尾さんの考え方が反映された主なやりとりを紹介する。(石黒雅史)

 質問 サグラダ・ファミリアはいつ完成しますか? 完成したら娘と行く予定です。

 外尾 完成とは何か。例えばある商品が完成したとする。でも実は翌年、もっといい商品が出る。じゃあこれは完成品じゃないのか。そういう意味では完成品はないんです。

 一応2026年完成を目指していますが、18本の塔ができ、構造的には完成するかもしれない。それでみなさんはガウディの彫刻が完成したと思いますよね。でもそんなことは絶対ありえません。サグラダ・ファミリアは人類を完成させるための道具です。真の完成は人類が完成したときです。

 質問 機能、構造、象徴という言葉はガウディに出会って意識したんでしょうか?

 外尾 機能と構造がなければ建物はできませんが、サグラダ・ファミリアは彫刻(象徴)があって初めて成り立つようにガウディが考えた。若い建築家に常に言っている言葉で、ガウディの特徴です。

 40年前はガウディの話をすると笑われるような感じでした。私はガウディの良さを信じ、疑ったことはない。でも今は世界の人が認めていますから、今の若者たちはちょっと不幸です。自分の目で確かめて、素晴らしいと判断できるチャンスを奪われてしまった。

 良き文化を発見するのは外国人の目。私は外国人の目を持ち続けているからこそ、あそこで価値が認められているのだと思う。

 質問 彫刻に対する熱意は何ですか?

 外尾 教師は、生徒の質問に答える素晴らしい仕事だったんですけれども、じゃあ私の疑問には誰が答えてくれるのか。まったく論理性のない答えですが、石を彫れば私の答えが見つかると考えた。石を彫るのは難しい。言うことを聞いてくれない。難しい何かに挑戦することで自分が伸びていくと思ったんです。

 石を彫っているときは、とっても気持ちがいい。石の中に入り込んでいると思えるくらい。暑さも寒さもなく人の声も何も聞こえない無の状態、そういう瞬間をいつかは持てると思って石を彫っている。

 質問 40年前、なぜガウディ、なぜサグラダ・ファミリアだったのですか?

 外尾 私にとってはガウディもサグラダ・ファミリアもどうでもよかった。石です。ヨーロッパの南で石と出合い、ガウディを意識するようになった。ガウディを一生懸命研究したんですが、どんなに努力しても分からない。でも作り続けなきゃいけない。できませんじゃすまない。そのときに、ガウディが見ている方向を見りゃいいんだと考えた。そうするとガウディがストンと入ってきて、私がガウディの中に入った感じ。だから今は、ガウディだったらこうしたであろうと思えるものができている。ガウディを見ていたのではガウディに近づくことはできない。ガウディが見ていた方向を見るんです。

 質問 千人ほどが作業に携わっていると聞きましたが、どうやってまとめ上げているんですか?

 外尾 私のチームに対しては、優秀、有能な芸術家たちに、例えば、僕たちは芸術作品を作っているんじゃないんだぞ、と言い続けています。じゃあ彼らは芸術工房で何をやっているんだという疑問が湧きますが、彼らには自分で探してほしいんです。

 ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の三大聖地、そこには芸術作品はないんです。魂の叫びに使われる道具があるだけです。芸術作品を作ろうとしている限り、本来のサグラダ・ファミリアはできないし、芸術作品もできない。突き抜けたところに行ったとき、他の人が見たら芸術作品になるんです。

◆外尾悦郎氏(そとお・えつろう) 1953年生まれ。県立福岡高、京都市立芸術大美術学部彫刻科卒。高校の非常勤講師を経て78年、バルセロナに渡り、サグラダ・ファミリアの建築に携わる。2005年、外尾さんの作品を含む「生誕の門」と「地下礼拝堂」がアントニ・ガウディの作品群としてユネスコの世界遺産に登録された。

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