ヤギミルクアイスを町の名物に 特産品作りに取り組む社長の思い

西日本新聞 ふくおか都市圏版 後藤 潔貴

コヤスファーム・小林孝昭さん

 福岡県宇美町のヤギミルクアイス「うみあいす」が絶品との評判だ。家業の石油販売業と二足のわらじを履きながら、自分で育てたヤギのミルクアイスを販売しているのはコヤスファーム社長の小林孝昭さん(37)。「宇美の名物を」と取り組んだ特産品作りに対する熱い思いを聞いた。

 「メェ~ン、メェ~」

 こちらを見つめるヤギの親子。「今のは『ねえ、どこ行きよっとね?』くらいの感じかな。最近ではヤギの言葉が少し分かるようになりました」。小林さんがいたずらっぽく笑った。

   ◇    ◇

 大学卒業後、父が経営するガソリンスタンドで働き始めた。青年団の仲間らと雑談する中で、地元には安産の神様で大勢の参拝客がある宇美八幡宮があるのに名物がない、と気付いた。「炭鉱があった昔はにぎわったけれど、今は寂れているよね」というスタンド客の話もあった。

 「よし、特産品を作る」

 思い立ったのはいいが、名案がない。宇美八幡宮があり、伝統的に子どもを大事にする町の特徴を生かしたいが、その先のアイデアが思い浮かばない。

 悩み続けて10年が過ぎたころだった。戦中戦後の物資が困窮した時代に、全国でヤギミルクが子どもたちを救った話を聞いた。乳の出ない母親が子の成長を願って飲ませたヤギミルク。「子どもを大切にする町の伝統と重なるじゃないか」と、興味が湧いた。

 ヤギミルクは栄養価が人間の母乳に近く、牛乳と比較してマグネシウムやカリウム、ビタミンが多く含まれている。また、脂肪球が6分の1の大きさしかないので吸収しやすいというメリットもあった。

 だが、1匹あたりの採乳量は牛の10分の1で、採乳できる期間は春~秋に限定。これでは商売にならないが、小林さんは、そこに商機を見た。「競争相手が少ない。うまくやれば特産品だ」

   ◇    ◇

 4年前からヤギを飼い始め、雄や子ヤギを含めて現在は30匹を飼育。採ったミルクを原料に、昨年からメーカーに製造委託したソフトクリームとカップ入りのアイスを販売開始した。甘さ控えめのさっぱり味が好評だ。移動販売車を県内各地のイベント会場に走らせてPRする。

 次の目標はヤギミルクそのものの販売。「例えばヤギミルクを使ったお菓子や料理などが町内で食べられるようになれば、人を呼べるようになる」。そのためにはミルク増産が不可欠。実現にはもう少し時間がかかりそうだが、来春からアイスの通信販売も始める予定。夢の続きへ着実に歩を進めている。 (後藤潔貴)

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