差別、構造変化、愛… みんな本が教えてくれる 大学生が読書案内

西日本新聞 くらし面 北里 晋

 大学生と本-切っても切れなそうな関係だが、読書離れは近年の大学でも深刻。そんな中、「学生に本を読ませる」ことで知られる九州大の出水薫教授、西南学院大の田村元彦准教授(いずれも政治学)のゼミに参加する学生4人に、お薦めの本やふだんの読書傾向について語り合ってもらった。司会は福岡市の出版社・忘羊社の藤村興晴さん。

 -うちの娘は中3だけど、読んでる作家はほとんど知らない人ばかり。みなさんはどんな本を読んでます? まずはこの1年間出版された中で一番印象に残った一冊から。

 飯村 チョ・ナムジュ『82年生まれ、キム・ジヨン』(筑摩書房)。韓国の女性が人生で出会う困難や差別を描き、日本でも大きな話題になった本。大学の読書会でも取り上げ、衝撃を受けました。

 中田 僕のベストは金成隆一『ルポ トランプ王国2』(岩波新書)。同じ著者の『ルポトランプ王国 もう一つのアメリカを行く』(同)『記者、ラストベルトに住む』(朝日新聞出版)の続編で、トランプ大統領誕生の鍵を握った支持者を追い続けてきた記録です。

 青江 小熊英二『日本社会のしくみ』(講談社現代新書)。ゼミで取り上げた本ですが、新卒一括採用など、みんな当たり前と思っている「しくみ」がどういう経緯でできたかが書いてあり、目を開かされました。

 北岡 橋本健二『アンダークラス』(ちくま新書)。やはりゼミで取り上げた本。副題に「新たな下層階級の出現」とあり、日本社会が過渡期にあることがよく分かる。自分も就活を控えており、切実に感じました。

 -いずれも現代社会のひずみを捉えた本ですね。

 青江 『日本社会のしくみ』も『アンダークラス』も構造変化がテーマ。大企業と中小企業だったのが正規と非正規という区分に変わってきたというような。前者は詳細なデータを根拠に背景を、後者は非正規の実態にも触れていてリアリティーを感じます。

 北岡 根底にあるのは行き過ぎた自己責任という考え方。誰でもアンダークラスに転落し得る。自分だって仮に大企業に就職できたとしても、何かしらの社会的変化で会社から放り出されたら何が残るんだろうとか考えてしまう。

 -女性が不利なのも構造的な問題では。

 飯村 読書会で『82年生まれ-』に一番共感していたのは私たちの親世代の女性。「そういうの(差別が日本にも)あったあった」という感じで。子どもを産むかどうか迷う場面で、主人公が夫に「あなたが失うものは何なの」と問いかける場面は圧巻。私だって家族も仕事も欲しい。胸にこたえました。

 中田 僕も読んだけど精神的につらかった。自分が男だから気づいてなかったことがズバズバ書いてある。同年代の男性に読んでほしい。

 青江 今は露骨な女性差別は減ったけど、見えない差別はあると思う。もっと怒らないと事態は変わらないんでしょうが、若い世代もあきらめてしまう人が多く、自分もその一人のような気が。

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