差別、構造変化、愛… みんな本が教えてくれる 大学生が読書案内 (2ページ目)

西日本新聞 くらし面 北里 晋

 ◆主人公に自己投影できるのが魅力

 -SNSなどでヘイト的な投稿をする身近な人っています?

 中田 そこにすら至ってないのでは。周りを見てもみんな思想的なものに関心がない。そもそも他人に対してそんなに興味ないんじゃないですかね。

 -(SNSで)ずっと他人の食った飯とか見てるのに(笑)

 中田 他人からの目線に興味があるだけ。

 飯村 韓国のことになると、やたらな人って身近にも多い。だいたい男の人。なぜ韓国嫌いになったか聞いても、よく分からない。反論しても無駄な気がして、もう笑って流すしかない。

 -そういうネガティブな感情って、ラストベルト(かつて製鉄や製造業で栄えた米国中西部から北東部の工業地帯。トランプ大統領の支持者が多い)にも共通するのでは。

 中田 彼らはもとは豊かな中流階層だけど、今はもう仕事も出て行く先もない。そんな喪失感や脱落感が(移民などへの)ヘイトにつながっているのでは。日本もそうなりかねないと感じます。

 北岡 『アンダークラス』も労働者階級が(正規と非正規に分裂して)ひとくくりにできなくなったという話。米国の状況は人ごとじゃないのかも。

 -今日持ってきた本以外、最近個人的に読んだのは?

 飯村 俵万智『オレがマリオ』(文芸春秋)とか短歌の本。今まで読んだことなかったけど意外に気楽に読めるもんなんだなと。

 青江 高校まで閉鎖的な環境だったせいか本が大好きで、受験期も気にせず読んでたけど、大学に入ってあまり読まなくなって。最近読んだのはフロム『愛するということ』(紀伊国屋書店)。愛に悩んだ先輩が「読んだ」と言っていたのを思い出して。思ったより愛するハードルって高いな(笑)

 北岡 僕はライトノベル好きで、お薦めは有名ですけど、長月達平『Re:ゼロから始める異世界生活』シリーズ(KADOKAWA)。いわゆる異世界ものって、自分の現状に満足できない人が主人公に自己投影できるのが魅力。学生って比較的立場が弱いし。

 -純文学は?

 北岡 爽快感だけの小説や漫画と違う魅力があるのは分かるけど、うーん。

 中田 本を読むとき、集中力は1時間くらいしか持たない。調子にのるとそのまま行けちゃうけど、考えながら読む本はきつい。

 飯村 正直、私も新書は休み休み読みます。

 -次に読むつもりの本は。

 中田 伊藤武『イタリア現代史』(中公新書)。

 飯村 山崎豊子『大地の子』シリーズ(文芸春秋)。ブックオフでまとめて安く買えたので。(出版社の人を前にして)あ、ごめんなさい。

 北岡 義江彰夫『神仏習合』(岩波新書)。授業で紹介されたというのもあるけど、仏教と神道だけでなく、いろんな宗教を相対化できるかなという期待がありまして。

 青江 1冊目は友達から借りた平野啓一郎『マチネの終わりに』(文春文庫)。激オシされたので読んでみようと。もう1冊は湯浅誠『反貧困』(岩波新書)。

 -友達に本を薦めたり薦められたりは。

 中田 就活が始まって本を読み始めた子もいるけど、そもそも読書の習慣がないので本の話に持っていくのが難しい。

 北岡 本以外に媒体がたくさん出てきて、読まなくても情報が入るので、それで満足してしまう部分があるかな。

 飯村 短編だったら薦めやすい。チョ・ナムジュら韓国女性作家の『ヒョンナムオッパへ』(白水社)を友達に貸したら、あまり本を読まない子だったけど、「めちゃ面白い」と喜んでくれた。

 青江 『マチネの終わりに』を薦めてくれた友達に、私の大好きな桜庭一樹『私の男』(文春文庫)を、勇気を出して薦めてみた。自分の好きな小説を他人に薦めるのって、自分の趣味嗜好(しこう)を開示して「それでもこれからも付き合ってくれますか」って告白するみたいなもの。私にはハードルが高かったりしますね。

 (構成・北里晋、写真・佐藤雄太朗)

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