【DCの街角から】「正論」超えて民意追う

西日本新聞 夕刊 田中 伸幸

 今年の年明けにワシントンで仲良くしている報道関係者数人と「来年の米大統領選で誰が勝つか」を予想し合った。

 私は「野党民主党の白人男性候補」と答えた。民主党と判断したのは、日々の取材で市民から感じる「反トランプ大統領」の熱気に陰りがなかったから。「白人男性」としたのは、前回トランプ氏に投票した中低所得層の白人男性に「好景気の恩恵が及ばない」という不満が募りつつあると聞いたからだった。

 トランプ氏に代わる受け皿を考えた場合、有色人種や女性ではなく、同じ白人男性の方が選択肢として無難だろうし、例えば好々爺(や)然としたバイデン前副大統領なら、ギスギスした米国の雰囲気を少しは和らげると期待されるのでは、と読んだ。

 しかし1年たった今、考えはぐらついている。トランプ氏を支えようという熱気も冷めていないからだ。

    ☆    ☆

 トランプ氏の支持者には新聞やテレビなど既存メディアへの強い不信感がある。

 米経済は好景気が続き、その恩恵を受けて現状に満足している人は多い。だがメディアの多くはトランプ政権に否定的な論調が目立つ。今月取材した中西部の支持者たちは「メディアは負の部分ばかりを取り上げて正確でない」と怒っていた。

 メディアが批判的に報じれば報じるほど、支持者は不公平感を募らせ、トランプ氏を頑として擁護しようとする。その意固地さがこれまで以上に高まっているように感じてならない。

 以前、米大手紙の記者に「メディアが社会の分断の一因となっていないか」と尋ねたことがある。するとこんな答えが返ってきた。「私たちは正しいと信じることを報道するだけだ」

 それは正論だ。トランプ氏の支持者の中には「報道は全部うそ」と一方的に決めつける人が驚くほど多い。だからこそ、おかしいことはおかしいと言い続けなければならない。

 ただ、前回選挙で米メディアは政治の常識の枠から外れたトランプ氏を異端視し、民意のうねりをつかめずに勝敗を見誤った。中西部の取材で、トランプ氏支持者数十人の集会を訪ねた。「トランプ支持の日本人記者が来た」と冗談めかして紹介されたのには困惑したが、次々と私にトランプ氏がいかに素晴らしいか熱く語り掛けてきた。彼ら一人一人の胸の内はやはりワシントンで聞く話やメディア報道だけではつかめない。

 来年はいよいよ大統領選。「反トランプ」と同様に「親トランプ」も民意だ。正論や常識論を漫然と振りかざすだけでは世論を見誤る-。そう自覚しつつ、大統領選を通してこの国がどこへ向かうのか、これからも各地の街角から丹念に追っていきたい。 (田中伸幸)

 =おわり

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