中山間地にAI乗り合いタクシー 最適ルートを自動作成 佐賀・有田町

西日本新聞 佐賀版 古賀 英毅

 公共交通機関が乏しい中山間地で、住民の移動手段として期待されている予約制乗り合いタクシー「デマンドタクシー」。2014年度から事業が始まった佐賀県有田町では今月から、最適な運行ルートをAIで導き出す実証実験が行われている。デマンドタクシーとは何か、そしてAIがどう関係するのか調べてみた。

 「トイレが壊れてね」「あら、大変」。今月中旬、町が事業を委託する有田タクシー(三枝(みえだ)茂利社長)の車内で乗客同士の会話が弾んだ。三枝純治支配人(40)が運転する車両は、タブレットの指示に従ってスーパーから別の店に寄って客を乗せた。「わーわー言い合うのが楽しみですよ」。乗り合いの魅力だ。

 利用できるのは旧西有田町エリアの曲川地区と大山地区で利用登録している人。目的地は町役場や病院などあらかじめ決められている。運行は月-土曜で午前中は8時半から4便、午後は4時までフリー運行。いずれも予約が必要だ。会社は利用者を地区、目的地に分けて整理し、送迎ルートを決める。AIはそのルート作りに活用されている。

 従来は予約を受けると紙に内容を書き込んで手作業でルートを作成、運転手が事務所で紙を受け取っていた。県の補助を受ける実証実験では、予約が入力されるとAIがルートを作り、車両配備のタブレット端末に送る。運転手は指示に従って運転すれば、客が待つ場所に到着する。

 「通りにくさなど地図だけでは分からない部分もあるし、お客様それぞれの事情もある。まだ人間の経験が上回るところはある」と三枝支配人。実際、今月2日に始まった実験では当初、AIがこんな指示を出した。同じ場所で4人が待っているのに、まず3人を乗せて、1人が降りた後に最初の場所に戻って残る1人を乗せる、と。いつものルートとは違う地区を経由したため客から「うちの家の方とは違う」と言われたこともあったという。

 不具合の情報はシステムを開発したモネ・テクノロジーズに連絡する。少しずつ修正が加えられ、疑問を感じる指示は少なくなった。同社の図子純也・事業推進部担当部長は「運行状況は想定通り。細やかな対応はまだ人間にはかなわないが、将来的にはどのような条件にも対応できるシステムを目指す」とする。

 システムでは、パソコンやスマートフォンを使って予約し、タクシーの現在位置も確認できる。だが、高齢者が中心の現在の利用者では機能を使いこなす人は少なく、予約はほとんど電話だ。「利用されている方にはAIの実感はないのでは」と三枝社長は言う。

 現在は手作業でルートを設定する従来の方式も併用しているが、AIの学習が進めばかなり省力化できる。三枝社長は「お客さんの情報など昔からの蓄積があり、AIではまだ補えない部分がある。しかし、初めてデマンドタクシーに取り組む社には有効だろう」と指摘した。

 運転手にとっては会社に戻ってルート確認する必要がなくなり、土地勘があまりなくてもタクシーを運行できる。実績に応じた補助金申請の書類作成もデジタルデータを共有できるため大幅に簡略化される。働き方改革につながる技術だ。

 実証実験は来年1月まで。2カ月間でAIがどれほど学習し、使い勝手が良くなるか気になる。ただ、どれだけデジタルの技術が進んでも、車内ではにぎやかな会話は消えてほしくない。 (古賀英毅)

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