「初めて本音を…」 性依存症の不安、相談できない家族たち

西日本新聞 社会面 森 亮輔

 「育て方を間違えたのか」と自らを責める母親がいれば、「いつか犯罪に手を染めるのでは」とおびえる男性もいる-。性依存症に悩む当事者やその家族は誰にも相談できずに抱え込む傾向にある。とりわけ日本では性がタブー視される。ただ、症状が悪化すれば犯罪に至るケースもあり、加害者にならないということは、被害者を生まないことにもつながる。識者は「遅れている医療や福祉の支援充実を社会全体で考えてほしい」と訴える。

 「息子さんはいますか」。数年前の朝、福岡県内の女性宅に警察官数人が訪れた。高校生の息子が性犯罪で逮捕された。「頭が真っ白になった」

 高校は退学し、家族の生活は一変した。外出できなくなり、相談相手もおらず孤立感が深まっていった。「被害者に申し訳ない。何が悪かったのか、甘やかしすぎたのか」。自問自答を繰り返した。

 少年審判を経て家に戻った息子を疑ってかかるようになった。外出中は落ち着かず、帰宅すると「何もしなかった?」と携帯電話をチェックした。半年後に別の性犯罪で逮捕された。すがる思いで自助グループ「SCA福岡」を訪ねた。

 「ご家族にもケアが必要です」と勧められ、12月の家族会に参加。同じ境遇の人たちに初めて本音を打ち明けた。いろいろな家族のさまざまな事情を知った。抱えていたものが、少し軽くなった。

 息子が勉強で強いストレスを感じていたことも分かった。不安は消えないが、落ち着きを取り戻した息子を支えたい。「家族会がなければ自分と息子を責め続けていたかもしれない」

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 九州北部の30代男性は十数年前、小学校低学年の女児に興味を抱くようになった。理由は自分でも分からない。性依存症の中でも「特に孤立しがち」(医療関係者)とされる小児性愛者になった。ストレスや疲れを感じると「ぐわーっと欲求が押し寄せる」。好みの女児のそばを何度も通り、携帯電話で盗撮すれすれのこともした。性依存症は治療可能とされるが、保険適用外で高額と聞く。専門病院は少なく、足は向かない。

 「捕まるんじゃないか。家族や仕事の関係者にばれるんじゃないか」。今は信頼できるカウンセラーと出会い、なんとかコントロールしている。

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 性依存症の治療には、抗ホルモン剤などの投薬のほか、行動や思考のパターンを修正する「認知行動療法」が有効とされる。ただ、医療関係者でも「病気ではなく、警察や司法の問題」と向き合わないケースがあり、「治療のノウハウがないため敬遠する病院は多い」(関係者)という。

 自助グループや家族会の運営に行政の支援は乏しい。性依存症に詳しい筑波大の原田隆之教授(臨床心理学)は「性依存症は当事者だけの問題ではないと知ってほしい。医療機関が積極的に取り組み、行政が相談できる場を充実させたり、自助グループや家族会に財政支援したりすることが必要だ」と指摘する。

 精神科医で「性障害専門医療センター」(東京)の福井裕輝代表理事は「治療を受けたいと思っても、高額な医療費や専門病院の少なさによりハードルが高い。保険適用で治療を受けやすくするなど環境整備が求められる」と話す。 (森亮輔)

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