they、日本ビール、996、ばらまき 2019年「バズった」言葉たち

西日本新聞 川原田 健雄 川合 秀紀 池田 郷 田中 伸幸

 昨今よく耳目に触れる「バズる」とは会員制交流サイト(SNS)などで言葉や話題が爆発的に広く拡散した際に使う造語だ。批判が殺到する「炎上」とは異なり、いい意味で使うことが多い。2019年、世界ではどんな言葉や話題がバズったのか。そこにその国のどんな世相が見えるのか。本紙特派員が紹介する。

 ■they(米国) 「男でも女でもない」代名詞 

 英語で彼ら、彼女ら、それらを意味する三人称複数の代名詞「they(ゼイ)/them(ゼム)」。英語学習の初めに覚えるごく基本的な単語だが、最近は単数として使う場合がある。自らの性を男でも女でもないと認識する人「non-binary(ノンバイナリー)」を表現する際に使うという。

 リベラルな若者が多く集まる左派系の会合を取材した時のこと。参加者はまず一人ずつ自己紹介するが、名前の後に必ず、男性なら「he(ヒー)、him(ヒム)」、女性なら「she(シー)、her(ハー)」と言い添えていた。ちなみに私は「ノブユキ、he、him」となる。

 会の進行役(31)に理由を聞くと、性の多様性が尊重される時代にあって、例えば生物学上は女性でも、男性として接してほしい人はその意向を周知するため、名前の後にheと付け加えるのだそうだ。そして「ノンバイナリーの人はtheyと名乗るんだよ」。

 ただ会合に参加していた高齢の男性は「違和感がある」と話した。theyを新しい意味で使うのはまだまれのようで、私も実際にそういう場面に出合った経験はない。とはいえツイッターなどで自己紹介の欄にtheyと表記している人は確かにいる。

 辞書でtheyを調べると、この新しい意味が掲載され始め、「2019年を代表する言葉」として取り上げた辞書もある。さて日本語ではどう訳せばよいだろうか。 (ワシントン田中伸幸)

 ■AOC(米国) 最年少女性下院議員・オカシオコルテス氏

 米国では今年もトランプ大統領が物議を醸す発言を繰り返したが、反トランプの急先鋒(せんぽう)として知名度を上げたのが、昨年の中間選挙で、米史上最年少の女性として下院議員に当選したアレクサンドリア・オカシオコルテス氏。頭文字を使った略称「AOC」は若者を中心に定着した。 (ワシントン田中伸幸)

 ■イルボン メクチュ(韓国) 日本ビール 棚から消えた 

 「在庫処分のため利益なしで販売します イルボンメクチュ」。最近、自宅近くのコンビニでこんな表示を見つけた。韓国語でイルボンは日本、メクチュは麦酒、つまり日本製ビールだ。表示には女性が涙を流し「もうけなし」を掲げるイラストが添えられている。

 もともと韓国で輸入ビールといえば日本製が不動の売り上げ1位だった。ところが夏以降、取り扱う小売店が激減した。日本政府による対韓輸出管理規制強化への反発が広がり、不買運動の標的になったのだ。

 「韓国人の怒りを伝えるため、大好きな日本のビールを我慢する」。7月に取材した20代女性はそう話した。あれから約5カ月。足元の事態は深刻化しているように見える。韓国の消費者はもはや日本のビールを忘れつつあるようなのだ。

 11月の日本製ビール輸入額は前年同月比97・5%減の約12万ドル(約1億3千万円)。国・地域別では前年同月の1位から17位に転落した。韓国のコンビニでは中国や欧米など各国の人気ビールが並び、品揃えは日本より豊富。仮に日韓関係が改善しても、果たして韓国のビール党は日本製に戻ってきてくれるだろうか。それは不買運動の憂き目にあった他の日本製品や日本観光などにもいえる。

 近所のコンビニでは日本製ビールの仕入れは既にやめ、在庫が切れればもう売らないという。晩酌を愛する韓国住まいの日本人として、この憤りを誰にぶつけるべきか…。昨今の日韓関係に思いを巡らせ飲むビールは、いつにも増して苦い。 (ソウル池田郷)

 ■386世代(韓国) 「80年代に民主化運動」前法相と同じ世代

 韓国では親族の不正事件で法相を辞任したチョ・グク氏の影響で「386世代」が脚光を浴びた。1990年代を30代で過ごし、80年代に民主化運動を経験した60年代生まれの世代を指す。現在の社会の中枢を支えるが、チョ氏の騒動を受けて世代交代論も浮上している。 (ソウル池田郷)

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