金正恩氏、挑発も米譲歩に望み 瀬戸際戦術に限界

西日本新聞 総合面 池田 郷

 北朝鮮は年始早々の1日、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の言葉として大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験再開を示唆するなど挑発を強めたが、米側の歩み寄りに望みをつなぎたい正恩氏の胸の内も見え隠れする。自らが昨年内と設定した非核化を巡る米朝交渉の期限を過ぎたにもかかわらず、経済制裁解除など成果を国内に誇示できない厳しい現実が足元にある。

 韓国メディアは、正恩氏が元日恒例の「新年の辞」を発表しなかった理由に注目。ある専門家は、正恩氏は2018年に軍などが非核化に反発する中で米国との対話を内外に宣言したものの「(制裁解除など)経済的な成果がない悩みがうかがえ、事実上、新年の辞を避けた」と分析した。

 昨年12月31日まで4日間連続で党中央委員会総会が開かれたのも異例だ。総会で正恩氏は「国家経済は発展の勢いを改善できずにいる」と率直に認め、経済の立て直しを表明した。新年の辞に代わって総会の内容が発表されたのは、正恩氏の方針が党全体に高く評価されていると誇示する苦肉の策との見方もある。

 正恩氏は1年前の新年の辞で「(米国が)制裁と圧迫を続けるのであれば、やむを得ず新しい道を模索せざるを得ない」と述べた。今回の演説では、制裁を続ける米国に対して「代償を支払わせる衝撃的な行動に出る」と宣言したが、実行は容易ではない。

 実際にICBM発射などに踏み切れば、米国だけでなく、後ろ盾の中国とロシアの「虎の尾」も踏むことになるからだ。中ロが国連安全保障理事会に提示した制裁緩和決議案も実現は一気に遠のく。

 軍事的危機をあおって譲歩を迫る瀬戸際戦術に回帰するようにも映る北朝鮮だが、確たる成算はあるのか-。正恩氏は今回の演説で米国を「強盗のような態度」となじりつつ、トランプ米大統領への直接批判を避ける従来の“一線”を守り、自身の置かれた難しい立ち位置を印象づけた。(ソウル池田郷)

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