中村哲さんの偉業を世界へ 政府が自伝英訳、57カ国へ寄贈

西日本新聞 社会面 坂本 信博 福間 慎一

 アフガニスタンで凶弾に倒れた福岡市の非政府組織(NGO)「ペシャワール会」現地代表の中村哲医師(73)の偉業を世界に伝えようと、政府が自伝を英訳し、2020年度中に海外57カ国の大学図書館や公共図書館、研究機関など約千カ所に寄贈する計画を進めている。作品は「天、共に在り アフガニスタン三十年の闘い」。中村さんの著作の英語版刊行は初めて。

 海外での日本理解を促す内閣府の翻訳出版事業「JAPAN LIBRARY(日本文庫)」の1冊として出版する。

 同書は、戦乱や干ばつで荒廃したアフガンやパキスタンで、多くの市民とともに人道・復興支援活動を続けた中村さんが、自らの生い立ちや医学を専攻した経緯、現地での医療支援、かんがい工事への情熱などをつづり、13年にNHK出版から刊行された。

 事業の事務局を担う出版文化産業振興財団(JPIC)によると、中村さんの自伝は19年1月に同事業での英訳が決定。中村さんの了解を得て作業が進んでいた同年12月、アフガン東部で銃撃事件が起きた。JPICの中泉淳事務局長は取材に「中村さんの意志が広く永く伝わるよう、いい本を作る努力をしていく」と答えた。

 ペシャワール会によると、中村さんの著書の外国語版は韓国語の2冊のみ。英訳は、現地での活動がテロ攻撃の対象になる恐れがあるなど安全確保上の観点から見送られてきた。同会の福元満治・広報担当理事は「現地スタッフの安全を守ることが第一。その上で、中村先生の行動を世界に知ってもらうきっかけになれば」と話す。英訳作業も慎重に進められるという。

 英訳版は1600~1800部を出版し、約1100部を海外へ寄贈。残りは国内外で販売するという。

 「日本文庫」事業は政府広報予算で14年度に始まり、これまで東日本大震災からの復興を描いたノンフィクションなど56作品を発行。英語圏を中心に寄贈・販売してきた。 (坂本信博、福間慎一)

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