ハンセン病元患者の「生きた証し」 地元で見てもらいたい

西日本新聞 総合面 一瀬 圭司

ハンセン病療養所入所者が描いた絵の「里帰り展」を企画した蔵座江美さん

 入り江に降り注ぐ神々しい夕日の油彩画。添えられた説明文に、1998年の制作年とともに作者の「物語」が記されている。

 「33歳でハンセン病と診断され、その帰宅中に船から見た景色だそうです。『死ぬことを考えながら涙で二重にも三重にもにじんで見えた夕日ですたい』と語られていました。作者の人生が変わった日が刻み込まれた作品です」

 国立ハンセン病療養所菊池恵楓園(熊本県合志市)の入所者が描いた絵の保存活動を2010年から続けている。熊本市現代美術館の学芸員だったが、活動に専念するため15年に退職した。園に通い、埋もれた作品を見つけ、作者の人生や思いを聞き取る。説明文を付け、整理した作品は100近くになった。

 たった一度だけ経験した小学校での遠足を、82歳になって描いた風景画があった。家族から亡くなったことすら知らせてもらえなかった実母の姿を思い浮かべた人物画も。多くの作者は既に亡くなっている。どんな気持ちでキャンバスに向かったのか、元患者の思いが胸に迫ってくる。

 市民団体や美術関係者などの依頼を受け、各地で展示会を開いてきた。20年10月には、熊本県天草地方出身の入所者の作品展を現地で開く。題して「ふるさと、天草に帰る」。家族や故郷と引き離され、望郷の念を抱きながら療養所で暮らしてきた人たちの「生きた証し」を、地元の人たちに見てもらいたい。

 1月から現地で住民を対象にした啓発講座も始める。「国内最大の療養所がある熊本ですらハンセン病への理解は進んでいない。作品がこの問題を自分のことと捉えるきっかけになってほしい」と願う。福岡市南区在住。(一瀬圭司)

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