聞き書き「一歩も退かんど」(54) 懲戒を求め6109人署名 志布志事件冤罪被害者 川畑幸夫さん

西日本新聞 オピニオン面 鶴丸 哲雄

 明けましておめでとうございます。私が住む鹿児島県では残念ながら西日本新聞が発行されなくなりましたが、北部九州に住む知人から「『聞き書き』読んでるよ」と反響の電話が入ります。福岡県内の読者の方からありがたい激励のお便りも頂きました。「鹿児島県志布志市、ビジネスホテル枇榔(びろう)」と書くだけで、うちには郵便が届くのですよ。私の闘いはまだまだ続きますので、本年もよろしくお願いいたします。

 前回は、踏み字国家賠償訴訟で鹿児島県が控訴断念を発表し、私の勝訴が決まったところまでをお話ししましたね。2007年1月31日のことで、翌日に感激の勝利集会がありました。

 この頃、私は署名活動に奔走していました。志布志事件の強引な捜査を指揮した当時の志布志署のK署長と県警本部のI警部、そして私に踏み字をさせたH警部補への、懲戒処分を県警に求めるのです。

 おなじみになった「川畑の街宣車」で地元の志布志市内や鹿児島市、宮崎県都城市などを巡り、街頭でこう呼び掛けました。「踏み字のような違法な取り調べを二度と許さないために、市民の皆さんのご協力をお願いします」

 反応はまずまず。1カ月余りで集まった署名は6109人分。旧志布志町の人口の半分近くになります。満を持して、懲戒処分を求める要請書と分厚い署名簿を、県警本部に持って行くことにしました。

 2月20日午後1時、県警本部に到着。私は署名簿を当時本部付になっていたK署長に直接手渡したかったのですが、かないませんでした。対応した県警の相談広報課長らに手渡して、「県警が生まれ変わろうというのなら、3人は県警にいてはいけない人物だ」と本気で訴えました。

 すると、K署長は2月26日付で依願退職するとか。許せません。それなら退職金も丸々もらえるでしょう。「懲戒処分が先じゃないか。身内をかばうにもほどがある」と強く批判しましたが、課長らは「本部長に伝えます」と繰り返すだけ。てんで話になりません。6千人を超すこの要請も、実行に移されるかは怪しいものです。

 署名簿の提出が終わった頃、ホテルで留守番をする妻の順子から「変な手紙が届いてるよ」と電話が入ります。急いで帰宅すると、手紙の差出人は、思いもよらぬ人物でした。

 何と、私に踏み字をさせたH警部補です。 (聞き手 鶴丸哲雄)

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