話題の『教場』シリーズ最新作。鬼教官が生徒たちの心をつかんだ方法とは?

西日本新聞

 警察学校を舞台とした異色の警察小説として注目を浴びている『教場』シリーズの最新作が登場した。累計73万部を超え、2020年1月4日・5日には旧作2作が木村拓哉主演でドラマ化された同シリーズ。本作はまさに「待望」のという言葉がふさわしい、シリーズ初の長編小説である。

 主人公は元刑事にしてベテラン教官の風間公親。警察学校は警察官に不適正な人間をふるい落とす場所と信じ、生徒から冷酷非情な鬼教官と恐れられている男だ。だが、今作はこれまでと趣きが異なる。新任の校長から、「一人の退校者も出すな」という指令を与えられたからだ。もし一人でも辞めた場合、風間の首も飛ぶ。

 とはいえ、新年度開始早々、雲行きは怪しい。入校式に遅刻してくる者。授業に全くついていけない者。若い女性教官に言い寄る者。女性生徒たちの喫煙疑惑もささやかれている。風間が担当する37名、いつ誰が辞めてもおかしくない状況なのだ。

 ところが風間は、そこから見事な指導力と人心掌握術をみせる。それもスパルタ式ではなく、まるで難事件を解決する名探偵のように予想もつかない機知に富んだやり方で。生徒をけむに巻くようなクイズを出す。型破りな授業をおこなう。そんな変化球を繰り出しつつ、相手によってはストレートに体と体でぶつかり合うこともある。その、退校寸前の生徒たちの心をつかみ、改心させ、エンパワーメントさせてゆくさまは圧巻というほかない。

 時々、企業で管理職をつとめる知り合いから、「最近の新入社員は厳しさに耐える力がない」とか、「世間がパワハラに敏感で、若手をどう叱ったら良いか分からない」といった愚痴のような悩みを聞くことがある。だが、厳しく当たることだけが教育ではないし、指導方法はいくらでもある。なにより本作には、そのヒントがたくさん散りばめられている。本シリーズや警察小説の愛読者だけでなく、職場で若手の教育に悩んでいる方にもおすすめしたい小説である。

 

出版社:小学館
書名:風間教場
著者名:長岡弘樹
定価(税込):1,500円
税別価格:1,650円
リンク先:https://www.shogakukan.co.jp/books/09386563

西日本新聞 読書案内編集部

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