冷戦終結から30年、トランプ・ドミノの衝撃をどう受け止めるか

西日本新聞

 外交ジャーナリストの手嶋龍一、元外務省主任分析官の佐藤優、外交・国際情勢を分析させたらその右に出るものはいないという2人による対談をまとめたものだけに、本書はかなり読み応えがある。昨年末には歴史上最悪とまでいわれた日韓関係だが、そのような状態にいたるには、いくつかの条件があるとされる。その重要な要素がアメリカのトランプ政権の政策、というよりトランプ大統領が繰り出すトランプ・ドミノだという。これまで禁じ手とされてきた政策を躊躇なく実行に移していくことで、国際政局が流動化する。これがトランプ・ドミノだ。トランプ大統領による北朝鮮政策が、連鎖的に北東アジアの情勢を変えつつあり、日韓の関係もこうした視野から見る必要がある。

 さて、トランプ・ドミノは北東アジアだけにインパクトを与えているのではない。一触即発の情勢さえ生んできたのが中東である。トランプ大統領は、エルサレムをイスラエルの首都とするなど禁じ手を打ち、中東情勢を流動化させている。当然のことながら日本にとっても無縁な問題ではない。なぜ日本のタンカーがホルムズ海峡で攻撃されたのか、日本は有志連合に加わるべきか否か、加わったときの影響はいかなるものか。こうした直近の問題も、トランプ大統領の動きと連動しつつ考える必要があるという。

 再びアジアに視線を戻すなら、米朝が蜜月関係にあるのに対して、米中は貿易問題を中心にして対決状態にあるといってもよい。米朝の接近、米中の緊張はトランプ・ドミノとして日本の安全保障にも影響をおよぼし、日米安保条約のあり方にも一石を投じることになるかもしれない。

 国際情勢は微妙な力関係がバランスを保つことで安定する。ほんの少しでもバランスを崩す力が加わることで、さまざまな変化が生じるということは歴史が示してきた。2016年にアメリカ・ファーストを旗印に掲げるトランプ大統領が現れ、異形の政策を連発するにおよんで国際的なバランスがいたるところで崩れつつある。こうした国際情勢をただセンセーショナルに取り上げるだけではなく、「インテリジェンス」という選りすぐりの情報をしっかりと分析しつつ私たちの目の前に示してくれる、それが本書の特長だ。これから日本がとるべき外交政策を考えるためのヒントを与えてくれるという意味でも、必読の書である。

 

出版社:中央公論新社
書名:日韓激突
著者名:手嶋龍一/佐藤優
定価(税込):924円
税別価格:840円
リンク先:http://www.chuko.co.jp/laclef/2019/12/150673.html

西日本新聞 読書案内編集部

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