2020経済展望 課題解決に新技術生かせ

西日本新聞 オピニオン面

 今年の一大イベントである東京五輪・パラリンピック。経済を考える上でも欠かせない。

 一流のアスリートと観光客が世界中から集う祭典の経済波及効果は民間試算では30兆円という。メインスタジアムとなる新しい国立競技場など既に完成したインフラ整備を含む数字であるとはいえ、政府が昨年まとめた総合経済対策の事業規模26兆円を上回るインパクトだ。

 国内外から東京に来る観客に大会を支えるボランティアなどを加えれば、その数は五輪の17日間で800万人、パラリンピックの13日間で240万人の計1千万人超に達する。政府は「2020年に訪日外国人旅行者4千万人」を目標にしてきた。この五輪・パラの人出にいかに対応するか。観光立国としての可能性の試金石となる。

■5Gサービスが登場

 東京五輪では、最先端の通信技術を使った新たなサービスの登場が楽しみだ。

 競技会場内で複数の視点での映像が楽しめるサービスが提供される計画で、五輪の興奮と感動をより多くの人が共有することができる。成熟した日本経済をハード、ソフトの両面で刺激することになるだろう。

 こうしたサービスを支えるのが、今春に商用サービスが始まる高速大容量の第5世代(5G)移動通信システムだ。2000年の九州・沖縄サミットをきっかけにiモードなど携帯電話を使ったインターネット接続サービスが広がったように、東京五輪で5Gを使った多様なサービスが花開く可能性もある。

 5Gで機械の遠隔操作が実用化されれば、農業や林業、建設業などの現場を大きく変える可能性をはらんでいる。「100年に一度の変革期」を迎えている自動車業界では、自動運転技術の具体化を大きく後押しすることになりそうだ。

 地域を限定して5Gサービスを提供する地域版5Gには、ケーブルテレビ会社や自治体が熱い視線を送る。5Gを活用した新サービスの提供やその開発支援につなげる狙いだ。

 ネットでモノをつなぐIoTの普及などで豊かな社会をつくる「ソサエティー5・0」がぐっと近づく。九州の企業や自治体も積極的に取り組みたい。

 他国に先駆けて少子高齢化が進むこの国は「課題先進国」。先んじて克服できれば、逆境が強みに転じることになる。

■人手不足の解消にも

 5Gによる自動化や省力化は労働力不足という、直面する課題の解決にも有効なはずだ。

 年中無休の24時間営業が前提のビジネスモデルで成長してきた大手コンビニチェーンが時短営業や休業日導入にかじを切ったのも深刻な人手不足が原因だ。大手コンビニが省力化のために取り組む無人レジや無人店舗の開発も5Gで加速する可能性がある。成果が出れば、アジアに広めた日本型コンビニへの展開も可能になるだろう。

 一極集中が進む東京と、人口減少著しい地方の格差是正も待ったなしだ。賃金格差が広がれば、若者の地方流出に歯止めがかけられない。その解決には、ITなどを活用して地場企業の生産性を底上げし、賃金水準を引き上げることが不可欠だ。最低賃金の引き上げにも官民挙げて取り組む必要がある。

 低金利の長期化と人口減少で経営環境が悪化した地域金融機関も対応が求められる。大手地銀同士が手を組んだり、金融持ち株会社SBIホールディングスが「第4のメガバンク構想」を掲げ第二地銀に出資したり、動きが活発になってきた。

 政府は、ふくおかフィナンシャルグループ(福岡市)と十八銀行(長崎市)の経営統合審査に時間がかかった反省から、独占禁止法に例外措置を設け、再編を後押しする方針だ。九州の金融機関も策を練り、地域の未来を開いてほしい。

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