教育再生元年 学ぶ喜びを知ってほしい

西日本新聞 オピニオン面

 新学習指導要領がこの4月から、小中高で順次実施され、戦後教育の転換点ともいわれる大改革がいよいよ本格化する。

 学年を問わず「主体的・対話的で深い学び」という新たな指導理念が導入される。知識を蓄えるだけでなく、それを活用する思考力や判断力、表現力などを育むことが主眼である。

 小学高学年では外国語(英語)が教科となる。論理的思考を学ぶプログラミング教育も始まる。グローバリズムやIT社会に対応するためとされる。高校ではいずれ、大規模な教科・科目再編も行われる予定だ。

 負担が確実に増えるだけに、子どもが「学ぶ喜び」と「考える楽しみ」を体得できるよう、教員は指導に知恵を絞ってほしい。学習の原動力は、何よりも知的好奇心である。

■読解力向上が課題だ

 戦後、日本の教育行政は「詰め込み」と「ゆとり」の間を振り子のように揺れてきた。

 米国流の自由で余裕のある教育から始まり、1960年代以降は学習量が増え、カリキュラムも過密化した。これが詰め込み教育と批判され、国は80年代に学習量を減らすゆとり教育を進めた。しかし、2000年代に入ると潮目が変わる。

 15歳の応用力や読解力を問うため、経済協力開発機構(OECD)が実施する学習到達度調査(PISA)で03年、日本は大きく順位を下げた。いわゆる「PISAショック」だ。

 この結果を受け、文部科学省は前回の指導要領改定で「脱ゆとり」にかじを切った。今回の改定はその流れを踏襲し、さらに深い思考力などの育成を目指している。

 昨年末発表されたPISA18年調査では、科学と数学の応用力は上位に踏みとどまったものの読解力は15位と低迷した。この順位に一喜一憂する必要はないが、読解力は学力の土台だ。

 読解力が伸び悩む要因に、若者に広がる会員制交流サイト(SNS)が短文中心である影響を指摘する識者もいる。授業で長文に親しむ機会を増やす工夫を求めたい。授業で新聞を活用するNIE(教育に新聞を)の推進も後押しになるだろう。

 家庭でも、SNSのルールをつくり、読書習慣を生活に定着させてほしい。

■現場の声に耳を傾け

 「主体的・対話的で深い学び」の実現には、教員にも授業を練る余裕が欠かせない。

 公立小学校の18年度教員採用試験の倍率は2・8倍で過去最低だった。九州では福岡県の1・3倍を筆頭に2倍未満が4県もある。定年による大量退職時代の到来と相まって、教育の質の低下を招きかねない深刻な事態と言えよう。

 民間への就職の堅調さが背景にあるようだが、教員という仕事を敬遠する風潮も広がってはいないか。深刻な長時間労働を是正するため、働き方改革を急ぐべきだ。まずは、各学校で教員が担う膨大な業務の削減に本気で取り組んでほしい。

 一連の改革は政府の教育再生実行会議が起点となってきた。大改革だけに、政治主導による強いリーダーシップが必要な場面もあろう。ただ議論が生煮えのまま「改革ありき」で強行しては、教育の現場に混乱を広げてしまう。大学入試改革を巡る騒動に、それは明らかだ。

 英語民間検定試験と国語・数学への記述式問題を導入する方針を検討した二つの会議の内容が昨年末公開された。16年の時点で、昨年問題となった地域格差や採点ミスの可能性は指摘されていた。文科省は仕切り直しの議論の中で、現場や識者の声に誠実に耳を傾けるべきだ。

 今年は「教育再生元年」とも呼ばれる。主体的に行動し、よく考えて判断する。異なる意見を持つ人と話し合い、問題を解決する-そんな力を養える教育環境を着実に整えたい。

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