「写真映え」の廃船、住民が撤去要請 20年以上放置で危険も

西日本新聞 長崎・佐世保版 華山 哲幸

 長崎市小瀬戸町にある皇后島(通称ねずみ島)の海岸に、さび付いた廃船が20年以上放置されている。今にも崩れそうな“はかなさ”が人気で、写真映えのスポットとなっているが、地元住民にとっては事故が起きかねない危険な「厄介者」。所有する会社は移動や撤去を拒み続け、数年前に解散。岸壁を管理する長崎県は対応に苦慮している。

 廃船は長さは約20メートル。操舵(そうだ)室の前方に「東京都」、後方には船名とみられる「銀杏丸」の文字が記され、総トン数、船体番号も記載される。船尾にクレーンを備え、他船のいかりを揚げる作業に用いられたとみられるが詳しい来歴は不明。

 ただ満潮時には船体の半分近くが沈み、月明かりに照らされる姿は「写真映え」する場所として会員制交流サイト(SNS)などでたびたび取り上げられる。衛星地図を利用したサービス「グーグルアース」では、なぜか「日本の史跡」として「銀杏丸」の名前付きで紹介されている。

 県長崎港湾漁港事務所によると、所有者は関西の会社で、登記簿の業務内容には電気・土木関係の工事、船舶の売買などと記載される。同社は1997年10月から約半年、県内の港湾施設に使用料を支払わずに船を係留した後、現在の場所に移動させた。地元住民らの話では、転売目的で購入したが買い手がなく、放置したとみられる。

 県はこれまで文書で撤去するよう勧告や命令を行ってきたが会社は「資力がない」と拒否。県は違法状態を認識しつつ「油が流出する危険性はない」として行政代執行は行ってこなかった。その間、2015年3月に会社の代表者が亡くなり、同12月に会社は解散した。県は親族にも連絡を試みたが、音信不通という。

 地元住民は放置された廃船を好ましく思っていない。潮が引くと海岸から簡単に内部に乗り込むことができ、倒壊に巻き込まれる可能性があるとして、自治会は再三、県に撤去を求めてきた。近くの浜辺では毎年正月に子どもらが古式泳法を学ぶ寒中水泳が行われ、廃船の前は浜辺への通り道となる。住民からは「事故があってからでは遅い」との声も漏れる。

 県の試算では処分費用は少なくとも1500万円。請求先の会社もなく、代執行すれば全額税金で賄うことになる。同事務所は「限られた予算の中で優先順位もあるが、処分に向けて検討したい」としている。

半数超は所有者不明、沈没例も

 都道府県の中で、漁港の数と海岸線の長さがともに2位の長崎県にとって、放置された廃船は悩みの種だ。一昨年末時点で県内51漁港で363隻に上る。高齢化した漁業者が引退後に置いたままにしたり、所有者不明になったりしたものが多く、沈没したケースも。こうした放置廃船は今後も増える可能性がある。

 県漁港漁場課によると、放置廃船の種類は漁船やプレジャーボートが大半。係留されたものだけでなく、港近くに引き上げられたものも含む。処分費用は所有者負担が原則だが、うち218隻は所有者不明だ。

 長崎市南部にある漁業組合の関係者は「引退した漁業者は処分費を払えない人が多い」と話す。また、漁船のパーツなどを転売するブローカーがエンジンなど高額で換金できる部品を取り出し放置する例もある。

 同市野母町の野母漁港では一昨年、放置された廃船2隻が港内で沈没。油が流出したため、県が引き揚げた。しかし、所有者から費用約470万円を未だに回収できずにいる。同課は「所有者特定のための調査と、撤去のお願いを地道に進めたい」としている。(華山哲幸)

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