【アフガン最新報告・中村哲医師】①復興が順調に進んでいると思うのは幻想だ

西日本新聞

 復興の動きとともに、政情不安の拡大が伝えられるアフガニスタン。現地でいま何が起きているのか。アフガンとパキスタン北西辺境州で十八年以上にわたり医療活動を続ける「ペシャワール会」(福岡市)の中村哲医師による最新報告を紹介する。

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 いま日本には、復興が進むアフガンの明るい姿が伝えられているが、アフガンは悪くなるばかりだ。

 地方の軍閥間の争いは日に日に拡大しており、米軍の空爆や誤爆も報道されている以上だ。地方の治安が悪いので、復興支援は首都カブールに集中し、地方には支援の手が届いていない。

 復興支援の外国人はカブールに一万人入っている。日本人も二百人いる。この支援ラッシュは家賃や物価の高騰を引き起こし、海外在住の家主ら一握りの富裕層が肥え太る一方、圧倒的多数の貧困層の生活がさらに困窮している。

 支援ラッシュによって私たちPMS(ペシャワール会ジャパン・医療サービス)のカブール事務所の家賃は月二百五十ドルから三千ドルにはね上がり、五百ドルのところに移転すると、そこも翌月から千五百ドルに上がった。新規参入した非政府組織(NGO)の家賃は八千ドルという。

 こうした中、私たちの現地スタッフが賃上げ闘争に入ったりして、スタッフコントロールの問題も生じた。

 カブールでは、押し寄せる各国のNGOが私たちがやってきたような活動を始めた。ペシャワール会は「だれも行かないところに行く。だれもやりたがらないことをやる」との原点に立ち返ることにした。六月十七日に五カ所の診療所活動をはじめとするすべてのカブールプロジェクトを撤収し、東部地区に絞った活動を始めた。

 地方での軍閥間の争いは、誰が敵か味方か分からない状態だ。米英軍の軍事行動も拡大している。現地の人々は、米英軍が去ったら、カブールの暫定政権は一週間ともたないだろう、と思っている。一方で、反米感情が急速に高まっている。タリバンが去って自由と民主主義が戻ったというのは幻想にすぎず、先進諸国による復興支援の始まりは混乱の始まりでもある。

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 この連載は、中村医師が十三日のペシャワール会総会で行った現地報告会(福岡市)と、本紙インタビューをもとに構成しています。

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 ▼なかむら・てつ 福岡市の医療NGO(非政府組織)「ペシャワール会」現地代表。1946年福岡市生まれ。九州大医学部卒。84年からアフガニスタン難民の医療救援活動などに取り組む。著書に「医は国境を越えて」「医者井戸を掘る」など。

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