【アフガン最新報告・中村哲医師】⑥注目を浴びても浴びなくてもやっていく

西日本新聞

 手元にアフガニスタンの子どもたちの写真がある。いずれも、にこにこしていて明るい。悲惨なのに悲惨な写真はない。モノがないことの楽天性。手を差し伸べる日本人ボランティアの方が表情は暗い。

 現地で十八年、人助けをしてきたつもりが、実はアフガンに助かってきたのではないか、と私は思う。アフガンの子らは、いつ死ぬかもしれないのに明るく生きている。帰国するたびに思うのは、日本では餓死とかないのに、自殺者が年間三万人以上いること。アフガンで自殺はほとんどない。

 日本人は、大事にしなくていいものを大事にし、なくていいものを必要と思い、信じなくていいものを信じていないだろうか。

 アフガンの農村の学校は、午前と午後の二部制である。午前中に学校に行き、午後から家の手伝いをする。午前中に手伝いをし、午後から学ぶ。先進諸国は自分たちの尺度で、児童労働だ、とかいうが、小さいころから父母らの仕事も学び、何より家族みんなで幸せに暮らそうと頑張っている。現地の慣習や文化を善悪、優劣で規定するのは傲慢(ごうまん)すぎる。

 私は現地活動を通じてアフガンの人々から、人間にとって大切な誇りや大切なものを失ってはならぬ、と教えられ続けている。

 アフガンはいま、最も暑い時期だ。日中の気温五〇度というところもある。これからマラリア、赤痢、腸チフス、コレラなどの感染症が増える。戦乱による荒れ地、がれきの中には砂バエがいて、リーシュマニア(アフガン特有の重い皮膚病)を媒介する。干ばつで水も足りない。物好き、と言われても、彼らが昔の暮らしを取り戻すための手助けをこれからも続けていく。

 アフガンに話題性がなくなると、活動資金も集まらなくなるだろう。だが、これまで、注目を浴びても浴びなくてもやってきたし、これからも現地の人々とともに揺れながらやり続け、学び続けたい。そのうち、私たちの活動を継いでくれる物好きな人々が出てきてくれると信じる。 =おわり

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 この連載は、福岡市の非政府組織(NGO)「ペシャワール会」の総会で現地代表・中村哲医師が行った報告と、インタビューをもとに、社会部・原田正隆が構成しました。

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