山中に1人「穴窯」で作陶 北九州の陶芸家、不眠不休で100時間

西日本新聞 北九州版 米村 勇飛

 北九州市若松区小石の山中で、陶芸家の吉武博士さん(60)が原始的な窯「穴窯」で作陶に励んでいる。毎年冬場に1回限りで行う窯焚(かまた)きは、たった1人、不眠不休状態で100時間がかり。温度調整が難しく、失敗のリスクも高い穴窯での創作にこだわるのは、偶然が織りなす美しさと、人の心を揺さぶるような焼き物を追求したいという思いからだ。

 現在はガスや電気の窯が主流だが、薪(まき)で炊く穴窯の歴史は古く、5世紀ごろには登場したとされる。吉武さんが約20年前に造った穴窯は断面が半円形のトンネル状で、およそ奥行き5メートル、幅1メートルの半地下式。

 窯の温度は最高で約1300度。松の薪を使って高温を維持することで、燃えるような赤褐色や「ナチュラルグラス(自然釉(ゆう))」と呼ばれる淡く輝くガラス質の光沢や、「灰かぶり」というゴツゴツした質感が陶器に定着する。一度に窯に詰める器は約千個。置き場所次第で色合いが変化するため、悩みながら窯詰めに約1カ月かけるという。

 八幡東区で生まれ育った吉武さん。古美術品を愛した祖父の影響で、小学生のときに陶芸家を志し、大学卒業後に備前焼(岡山県)などの窯元で修業した。

 20代では陶芸を学ぶために米国に留学。絵画や音楽など他分野の芸術家やその卵たちに囲まれて過ごすうち「もっと自分の色を出していく必要性を感じた」という。ナチュラルグラスなどが得られる穴窯に行き着いたのも、留学時の経験を基に自らの独自性を追い求めるためだ。

 窯焚きで納得がいく作品ができるのは例年、全体の3割程度だが、吉武さんは「この色を出すために夢中でやっている。結果ダメでも悔いはないでしょう」と笑う。「きついけど体が動く限りは100時間の窯焚きも続けていきたい」と意欲は尽きない。 (米村勇飛)

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