政府含め組織の在り方議論を 弁護士・郷原信郎氏

西日本新聞 総合面

 新経営陣がまず急ぐべきは、徹底した不正の調査と顧客の不利益の回復だ。

 外部弁護士でつくる特別調査委員会の報告書では、顧客からの訴えで不正が疑われる事案が発覚しても、営業担当者が否定した場合は不正と認定せず、問題を矮小(わいしょう)化してきた組織風土が明らかになった。

 現在、日本郵政グループが行っている調査も内部で行われている。本当に厳正な調査になっているかを検証するためには、第三者によるサンプル調査を実施する必要がある。

 これまでの報道で、重点的な調査対象となっている約18万3千件の特定事案以外にも、孫や子どもが死亡したら高齢者が保険金を受け取るなどの不自然な契約が多数確認されている。

 単に法令や社内規定違反の有無を調べるだけでは不十分だ。顧客にとって実質的な不利益がなかったのか。この点を徹底して調べる姿勢が求められる。

 日本郵政は約2万4千の郵便局網を維持し、全国どこでも郵便や保険、貯金が利用できる「ユニバーサルサービス」が法律で義務付けられる。民業圧迫を避けるため保険商品の開発にも制約があり、魅力的な商品が販売できない。

 こうした足かせがありながら収益拡大を目指した結果、保険営業の現場に過大な負荷がかけられ、顧客の不利益につながる不正販売が蔓延(まんえん)してしまった。

 私は2010年に「かんぽの宿」の売却問題を調査する「日本郵政ガバナンス検証委員会」で委員長を務めた経験がある。今回の不正販売の背景には、政治の影響を受ける特殊な組織構造があり、根本的な問題点は当時から何も変わっていない。

 自民党内には今も民営化に反対する声があり、問題解決は容易ではない。今後もユニバーサルサービスを維持するのか、それとも完全民営化を目指すのか。政府も巻き込んで組織の在り方についての議論に踏み込まない限り、また同じ不祥事が繰り返されてしまうだろう。 (談)

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