聞き書き「一歩も退かんど」(60) うその友と真実の友 志布志事件冤罪被害者 川畑幸夫さん

西日本新聞 オピニオン面 鶴丸 哲雄

 志布志事件の全員無罪判決から一夜明けた2007年2月24日、私たち志布志事件の仲間が、お墓に集まりました。公判の途中で亡くなり、被告で1人だけ無罪判決を聞けなかった山中鶴雄さんの墓前に、勝訴報告に来たのです。

 前日には鹿児島地裁で、男性被告最高齢の永利忠義さんが、山中さんの遺影を高々と掲げました。永利さんは闘病中の山中さんに「しっかり休め。絶対に無罪を勝ち取る」と約束していたそうで、墓前では人一倍感慨深げでした。私も墓に手を合わせ「勝ったど。鶴雄さん」と呼び掛けました。孫にケーキを買ってあげるあの優しい笑顔が、まぶたによみがえりました。

 その翌日、被告の1人で私の妻のいとこ、中山信一のもとに額に入った2枚の書が届けられました。持参したのは妻の弟の加世田真。志布志市松山町で飲食店を営んでいます。そのいきさつをお話ししますね。

 それは中山の逮捕から間もない2003年6月28日の昼下がり。義弟の店に2人の刑事が来ました。懐(ふところ)集落の買収会合で出されたというオードブルの出所を洗う聞き込み捜査です。

 もちろんオードブルなんてでっち上げ。義弟は怒ります。「そんなもの出していない。あんたらは何のために警察官になったのか」

 すると、刑事の1人は「私たちは真実を探している。分かってほしい」。義弟は「自分の身内をこれほど苦しませて、何が正義の味方だ」と反発。口論の末、2人は去りました。

 その日の夕方、2人がまた店へ。「私たちの気持ちはこうです。事件が解決したら中山さんに渡してください」と、新聞紙にくるんで差し出したのがこの書。別の聞き込み先で販売していたのを買ってきたとか。そこにはこんな言葉が。

 <うそで固めた意志は崩れ落ちて行くが、真実で固めた意志はなお固い石になり崩れない>

 <うそはうその友を呼び真実は真実の友を呼ぶ>

 この言葉の通り、うそつきには真(まこと)の友はできません。真心で付き合い、真実を語るからこそ、真の友ができます。真実を貫くことこそが人の道なのです。

 義弟から話を聞いた私たち夫婦は、この書をコピーして今も応接間に飾り、読み返しています。鹿児島県警にはこんな正直な警察官もたくさんいたことをぜひ覚えておいてください。

 さて、真実の友-。あなたには何人いますか。 (聞き手 鶴丸哲雄)

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