米イラン対立 収拾へ双方一層の自制を

西日本新聞 オピニオン面

 報復の連鎖が戦争を引き起こす最悪の事態はひとまず回避された。それでも米国とイランの対立は依然、火種がくすぶり、予断を許さない。再び中東の緊張を高めることなく事態を収拾させるよう、関係国は両国に強く働き掛けねばならない。

 イラク駐留米軍へのイランの弾道ミサイル攻撃に対し、トランプ米大統領は「軍事力は使いたくない」と反撃しない考えを表明した。イラン外相も「自衛措置を完了した」と発信した。

 国際社会も一触即発の事態に重大な懸念を示していた。両国指導者が抑制的な対応を取ったのは当然の判断である。

 同時に、全面的な戦争への突入は避けたいという両国の本音もうかがえた。イランはミサイル攻撃で人的被害が出ないよう着弾させ、米側と水面下で間接的な折衝も試みていた。中東に展開する駐留米軍の縮小、撤退を公約に掲げていたトランプ氏も、さらなる軍事報復は11月の大統領選にマイナスとの計算が働いたのだろう。

 この「戦争だけは回避する」という思惑の一致を、緊張緩和に向けた転機にしてほしい。

 もちろん楽観はできない。トランプ氏は軍事報復を控える一方で追加制裁を打ち出した。これまでの制裁でイラン経済は疲弊しており、昨年11月、ガソリン価格の値上げに大規模な反政府デモも起きた。イラン政府が国民の不満の矛先を米国に向けるため、再び強硬姿勢を取ることは想定できる。

 イラクやイエメンといった近隣国の親イラン武装組織が独自の報復に踏み切り、米軍を巻き込む偶発的衝突に発展する懸念も残る。現に、在イラク米大使館近くにロケット弾が撃ち込まれるなど不穏な動きが続く。

 何より最大の難問はイランの核開発である。2015年の核合意から米国が離脱して以降、イランは段階的に履行を停止し合意破棄を通告した。こうした瀬戸際戦術には限界があり、欧州との関係も冷え込む一方だ。

 核合意は核兵器製造につながるウラン濃縮に制限をかけ、国際原子力機関(IAEA)が監視する枠組みで、一定の役割を果たしていた。トランプ氏は、弾道ミサイル開発の黙認など合意には欠陥があると批判する。

 だが、ここはまず米国が合意に復帰して多国間でイランを説得していくのが筋ではないか。圧力一辺倒では展望が開けないことは証明されたはずだ。合意の維持は日本だけでなく、当事国の英仏独中ロも求めている。

 まさに外交の重要性が増している。安倍晋三首相が今日から中東3カ国を訪ねる。米国、イラン双方に緊張緩和を促す国際社会の連携に尽力すべきだ。

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