「安全か、行ってみないと」 海自機中東へ出発

西日本新聞 社会面 塩入 雄一郎

 海上自衛隊のP3C哨戒機が11日、いまだ緊張緩和が見通せない中東へ向け飛び立った。派遣命令の根拠となる「調査・研究」は武器使用の可能性が低い任務が前提で、不測の事態には武器を使える海上警備行動に切り替えるとしている。「現場の安全確保は万全なのか」。かつて海外派遣された経験がある元自衛官らからは懸念も投げ掛けられた。

 「命令が出されれば、それに従い、任務を果たす。それが自衛官」。東日本の海自隊員に中東派遣について聞くと、淡々と語った。「日本の船が(現場海域を)安全に航行できるかの情報収集。自衛隊派遣は当然だ」

 とはいえ、防衛省設置法の「調査・研究」は日本の関係船舶であっても警護はできず、不審な船が接近してきた場合も停船射撃の強制措置は取れない。海上警備行動の武器使用権限も、正当防衛と緊急避難時に限られたものだ。

 「憲法上、そういう形でないと派遣できなかったのだろうが、現場としては(安全確保の)法的な整備をしてほしいと思っているはずだ」。元陸上自衛官で、2004年に復興支援活動の警備小隊長としてイラク南部サマワに約3カ月間派遣された門馬有道氏(69)は、中東海域に赴く隊員の心中を代弁する。

 サマワでは、宿営地や車列を警備。市街地に出る時は自爆テロを常に警戒し、民衆の中にテロリストが潜んでいないか神経をすり減らした。日本政府は当時、活動場所を「非戦闘地域」と説明していたが、門馬氏は「戦闘地域」だったと今も思っている。「現場の安全確保策は、私たちの時からあまり進んでいないように感じる。与野党に関係なく、現場に支障が出ないようきちんと考えてもらいたい」と話す。

 政府は今回の海自中東派遣の活動海域について、日本の海運会社が運航するタンカーが昨年攻撃されたホルムズ海峡を含めず、「安全なエリア」と強調してきた。だが、年明けからの米国とイランの対立で現地の緊迫度は高まっている。

 元外務省中東第2課長の宮原信孝氏は「自衛隊の活動は、日本の船を守る抑止力につながる。派遣を決めた政府判断は評価できるが、安全か否かは実際に行ってみないと分からない」と指摘する。自身が在アフガニスタン大使館公使だった時も、治安状況にストレスを覚えながら毎日を過ごした。「中東で任務に当たる海自隊員も同じだろう。政府は、隊員や家族へのケアを万全にするべきだ」と訴えた。 (塩入雄一郎)

PR

社会 アクセスランキング

PR

注目のテーマ