郵政3社新体制 看板すげ替えで終わるな

西日本新聞 オピニオン面

 社長の首のすげ替えだけで終わっては意味がない。顧客に与えた不利益を全て解消する。不祥事を繰り返さないために新たな組織風土を築き上げる。これに全力を挙げるべきだ。

 かんぽ生命保険の不正販売問題に揺れる日本郵政グループが増田寛也新社長の下で再出発した。かんぽ生命と日本郵便の社長も交代した。対応が後手に回り、不正の拡大も防げなかった旧経営陣が5日付で引責辞任した後を引き継ぐ。

 9日の就任記者会見で増田氏は「一刻も早く全容を解明し、顧客の不利益を解消する」と述べ、詳細調査の範囲を従来より拡大する方針を示した。ようやくではあるが、当然の決断だ。

 「郵便局の人」が勧める商品だからと中身を理解しないまま契約した人が少なくない。こうした人々を一人として置き去りにしない。信頼回復にはこの道あるのみだと新経営陣は肝に銘じてほしい。

 一番の問題は、不正の全体像がいまだ明らかになっていないことだ。保険の二重契約など18万3千件の特定事案調査に重点的に取り組んできたが、1900万人を対象とする全契約調査の方でも、不正販売を含む苦情が数多く寄せられている。

 年金暮らしの高齢者が収入以上の保険料を払ったり、孫が亡くなったら保険金が入る商品を購入したりと常識で説明が難しい事案も判明している。本当に顧客の意に沿う契約だったのか、確認が必要だ。調査態勢を思い切って増強すべきである。

 不正が横行した原因とも正面から向き合う必要がある。

 手当欲しさに営業担当者が不正に手を染め、営業目標を達成するために上司も黙認する。顧客から苦情が来ても管理部門は受け止めず改善策を講じなかった。こうした問題点は、グループ3社に行政処分を下した金融庁と総務省も指摘している。

 最終的には組織風土を改めなければ、再発防止は望めまい。日本郵政グループは150年の歴史を持ち、親しまれてきた。一方、役所時代の事なかれ主義がはびこるとの指摘もある。

 その点で、新社長が3人とも官僚出身である点は気になる。日本郵政の前上級副社長が旧郵政省の先輩後輩関係を利用し、行政処分に関する総務省の内部情報を入手していた。官僚の天下りを含め、官との癒着と疑われる行為はこの際、厳に断ち切るべきである。

 増田氏は岩手県知事、総務相と行政を束ねた経験はあるが、上場企業経営は初めてだ。民営化を前に進めるには2万4千の郵便局ネットワークを活用する中長期戦略が不可欠だが、当面は危機対応に注力すべきだ。

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