「犯科帳」という古文書が長崎に伝わっている…

西日本新聞 オピニオン面

 「犯科帳」という古文書が長崎に伝わっている。江戸時代に長崎奉行所が扱った判決集である

▼養育料をだまし取って幼児を川に捨てた女を死罪にした。いんちき賭博や偽金造り。娘を食い物にする親や、母の減刑嘆願が実ったのに以後も悪事を繰り返す親不孝息子も裁いた。略奪婚の風習も記録する

▼犯罪にも国際色がある。密貿易を企て、中国人の居住区まで地下トンネルを掘った一味。出島のオランダ人を欺いた通訳の役人がおり、外国人と町民との乱闘も起きた。異教徒の取り締まりはピリピリ緊張。けんかの腹いせに「兄はキリシタン」とうその訴えをした弟が、不届き至極とはりつけになった

▼年中行事にも目を光らせる。祭りや精霊流しが華美過ぎると、質素を命じる触れを出す。けんかが絶えないペーロン競漕(きょうそう)は毎年のように禁止令である。けれど、聞く耳持たずで効果なし。封建社会でもたくましく、したたかな庶民の姿も浮かぶ

▼そんな「お上」の公文書とは違い、地元有力者が記したトラブル録が見つかったと先日の本紙に。副業がばれて職務停止。遊郭での女性同士のもめ事など、町方の日常を描くそうだ。江戸期の生活を知るほどに人の世の欲得、愛憎は時代を問わないと感じられて興味深い

▼本稿は森永種夫著「犯科帳」を参照した。奉行所跡に立つ長崎歴史文化博物館(長崎市立山1丁目)では、犯科帳の一部を解説展示している。

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