炎症性腸疾患 薬物療法が進化【続・産業医が診る働き方改革10】

西日本新聞

 「ラインに戻れるようになったよ!」。自動車製造工場で働く吉田隆さん(31)=仮名=が家族そろってにぎやかに夕食をとりながら笑顔で話しています。今日、産業医の復職の面接を受けたのです。

 吉田さんは潰瘍性大腸炎で治療中です。27歳のとき、血液の混じった下痢と腹痛が始まり、1カ月たっても良くならないため、近くのクリニックにかかり診断されました。5-ASA製剤という飲み薬でおなかの症状は良くなりました。しばらくは良かったのですが、1年ほど前から服薬をずっと続けているにもかかわらずおなかの症状が悪くなり、ステロイド剤を併用することに。ステロイド剤も最初はよく効いていたのですが、だんだんと効かなくなってきました。作業中にトイレに行くのを我慢できなくなり、ライン作業を続けられず欠勤を繰り返すようになりました。

 「このままライン作業を続けるのは難しいのではないか?」。休養してもまたすぐに悪くなるので不安になり、産業医に相談、産業医の勧めで大学病院を受診しました。

 従来の治療薬である5-ASA製剤とステロイド剤ではコントロールが難しい病状であるため、免疫調整薬と抗体製剤による治療が始まりました。徐々に症状が安定してきたので、ライン作業への復帰が今日決まったのです。

 下痢や腹痛は誰もが経験したことのある身近な症状です。そのときはとてもつらいのですが、数日でケロッと良くなることも多くみられます。

 潰瘍性大腸炎とクローン病をあわせて「炎症性腸疾患」と呼んでいます。炎症性腸疾患は腸に慢性の潰瘍ができ、おなかの症状がなかなか良くならずに長く続いたり、良くなってもまたすぐに悪くなったりする原因不明の病気で、年々増加しています。若い人に多く発症し学業や仕事の妨げとなることもあります。近年、従来の薬では治療が難しかった患者さんにも有効な新薬が続々と登場し、薬物療法が大きく進化しました。治療と仕事の両立支援のガイドラインもつくられています。(産業医大・芳川一郎)

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