アルツハイマー型認知症【続・産業医が診る働き方改革12】

西日本新聞

 「最近、仕事でのミスが多くて」。商社に勤める山田宏一さん(58)=仮名=は、奥さまに連れられて病院を受診しました。

 3年ほど前から以前のようなスピードで仕事をこなせなくなっていましたが、重要なことを忘れたり、簡単なミスをするようなことはなかったので、年齢のせい程度に考えて、産業医に相談したり、病院を受診したりしていませんでした。

 さすがに最近は、前日の会議の内容を忘れてしまったり(記憶障害)、ロッカーの鍵や重要書類のしまい忘れが目立つようになり、物が見つからないと部下のせいにしたりして(人のせいにする、判断力の低下)、おかしいと思ったそうです。日常生活でも、前に話した内容を覚えておらず近所に住む妹に何度も電話したり(記憶障害)、買い物に行って同じビールをたくさん買って冷蔵庫内をいっぱいにしたり(計画性欠如、遂行障害)、好きで通っていた囲碁教室へいろいろ理由をつけては行かなくなったり(新たなことをしたがらず、引きこもる、社会性消失)していました。

 診察場面では、「今日は何月の何日ですか?」と問われると、「えーっと、何月でしたっけ」と奥さまの方を振り返って尋ねる(人に頼る)、「今日は新聞もテレビも見てこなかったものですから」と言い訳する(取り繕い)など、アルツハイマー型認知症の特徴的な振る舞いをしていました。

 約10年前の厚生労働省の調査で、全国の若年性認知症者数は3万7800人と推定されました。現役で働いている人でも認知症を発症する可能性があります。働き盛りで認知症を発症することは、職場でのパフォーマンスに影響するだけでなく、子育てが終わっていない家庭にも影響します。

 認知症を発症する前には軽度認知機能障害と呼ばれる前段階があり、(1)以前の水準と比べて認知機能の低下がみられる(2)年齢や教育歴を考慮しても明らかな一つ以上の領域での認知機能の低下が客観的に認められる(3)日常生活の機能は保たれている-などの特徴があります。この時点では認知症ではありませんが、将来は認知症に移行するリスクの高い群であり、産業医や病院での慎重な経過観察が必要です。

[産業医の方へ]
 このような軽度認知機能障害が疑われる方は、早期に診断して運動などで認知症発症を予防していくことが重要です。ただし5年経過しても半数は認知症に移行しないこと、逆に回復する例もあることを話し、必要以上に認知症になる不安をかきたてるような説明は避けた方がよいでしょう。(産業医大・足立弘明)

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