放射線被ばく 正しい知識を【続・産業医が診る働き方改革13】

西日本新聞

 日本に住む私たちは日常、大地から宇宙から、あるいは食物などからの自然放射線によって、年間約2・1ミリシーベルト被ばくします。また、CT検査や放射線治療による医療被ばくは国民1人当たり年間3~5ミリシーベルトであり、合計すると年間5・98ミリシーベルト被ばくするといわれています。医療被ばくが多いのは、日本は先進諸国の中で約2倍のCT台数を持っていることが理由です。

 放射線の影響が出るのは50ミリシーベルトとか100ミリシーベルトという値をいわれることがありますが、これは原爆被爆者などの疫学研究から示された値であり、科学的に証明することは困難です。したがって、低線量放射線の確率的影響(がんや白血病など)に関しては、「分からない」と言わざるを得ません。確定的影響である目の水晶体の混濁は500ミリシーベルトで生じると、国際放射線防護委員会(ICRP)が2011年に声明を出しました。

 放射線業務の場合、線量計を装着する義務があります。「放射性同位元素等の規制に関する法律」(原子力規制庁)と「労働安全衛生法・電離放射線障害防止規則(電離則)」(厚生労働省)では、線量限度は実効線量(全身被ばく量)として5年間で100ミリシーベルト、1年間で50ミリシーベルト、等価線量として皮膚は年間500ミリシーベルト、目の水晶体は年間150ミリシーベルトとなっています。しかし、目の水晶体の線量限度は5年間で100ミリシーベルト、1年間で50ミリシーベルトと、2021年ごろに法改正される予定です。電離則では、緊急作業の場合、条件を付けて実効線量として最高250ミリシーベルトが限度とされました。

 原発作業員などの線量管理は厳しくされていますが、医療従事者は治療を優先することが多く、線量管理が正しく行われていないことが問題となっています。医療被ばくが多いということは、医療従事者の職業被ばくも多くなる可能性があります。鉛入りの防護エプロン、防護メガネや遮蔽板の使用によって、被ばく量は軽減します。

 線源から「距離」を取る、放射線を「遮蔽」する、被ばくの「時間」を短くする、という外部被ばく防護の3原則を念頭に置いておく必要があります。放射性物質が舞うような職場では、内部被ばくや汚染から防護するために、防護服、ゴーグル、マスクおよびシューズカバーなどを用いて体表面の露出を防ぎ、口、皮膚および気道からの侵入を防ぎます。

 放射線は、工業では品質管理や検査、滅菌、農業ではジャガイモの芽止め、品種改良、医療現場では診断や治療など、幅広く利用されています。しかし、いったん事故が起こると不安が増え、この程度の数値では安全と説明しても安心は得られません。普段からの教育によって、放射線の知識を増やしておくことが重要です。放射線は正しく怖がりましょう。(産業医大・岡崎龍史)

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