衛生管理者の役割 五感で巡視【続・産業医が診る働き方改革14】

西日本新聞

 坂口真理さん(30)=仮名=は精密機械部品を製造する会社の総務部に所属し、衛生管理者として働いています。衛生管理者の職務は職場環境の改善、労働条件の管理、衛生教育の実施、労働者の健康保持増進など多岐にわたります。

 職場巡視もその職務の一つで、週1回職場を巡視し、気付いた点を指摘して改善してもらうようにしています。先日、ある作業場の巡視に行ったとき、いつもと違うにおいがしていると感じました。現場の作業者に「何かにおいを感じませんか?」と尋ねましたが、「いや、いつもと変わらないと思うけど」との答えでした。その作業場では、加工した機械部品の洗浄に有機溶剤を使用しており、坂口さんはその有機溶剤のにおいではないかと思いました。

 この作業場では、働いている人が有害物質を吸って健康を害さないように洗浄槽から上がってくる蒸気を吸引除去する局所排気装置が設置されています。また半年に1回、作業環境測定を実施していますが、これまで特に問題はありませんでした。しかし、今回においが気になったので、きちんと排気されているか発煙管を用いて空気の流れを観察したところ、吸引が弱いことが分かりました。調べてみると、配属されたばかりで仕事に慣れていない別の作業者が溶剤をこぼし、拭き取った布(ウェス)を排気フードの前に放置していたということで、排気フードがウェスを吸い込んで配管が詰まったことが原因だと考えられました。

 現場の作業者はにおいに慣れてしまっていて、異常に気付かないことがあります。しかし、これを放置しておくと有害物が室内に拡散し、作業者が吸って健康障害を起こす可能性があります。局所排気装置は現場で広く使用されるものですが、詰まって吸引できなくなるとたちまち環境は悪化します。ウェスを取り除き、排気フードの前には物を置かないこと、払拭(ふっしょく)したウェスは放置せず直ちに廃棄することを徹底するようにした結果、においはほとんどしなくなりました。

 職場では目に見えないところに問題がある場合があります。坂口さんは見るだけでなく、五感を使って巡視をすることの重要性をあらためて認識しました。(産業医大・保利一)

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