【九州から日本変えよう】 宮本 雄二さん

西日本新聞 オピニオン面

◆多様性と連携力を磨け

 世界の変動はとてつもなく速いのに、日本の動きは遅い。社会の変容に対して、政治の対応は鈍い。大天災がカウントダウン局面に入っているにもかかわらず、対策は「ぬるま湯状態」に見える。

 日本全体の準備が整うのを待ってスタートしたのでは、間に合わない。覚醒した人、コミュニティー、地方が変革への行動を始め、流れを起こすべきだ。私の故郷である九州から、その動きをつくってほしい。

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 九州は、昔から外に開かれてきた。それだけ海外の動きに敏感であり、明治維新に貢献した藩は、西に集中している。好奇心が強いから、自らを外に開く。「異なるもの」に関心をもち、理解をし、活用しようとする。多様性の尊重である。私は地方再生、地方創造の一つの鍵が、「異なるもの」の重視と追求にあると考えてきた。

 そもそも、それぞれの地方の自然条件は異なり、歴史、伝統、文化も異なる。違っていて当たり前なのだ。徹底的に「異なるもの」を追求し、独自性の発揮につなげてほしい。「異なるもの」が他をひきつけ、そこに新しい価値が生まれる。

 「異なる」視点も重要だ。これがないと独り善がりに陥る。利用者や外国人の視点、つまり「外」の視点が不可欠なのだ。「外」の視点を入れることで、普遍性が広がり、より大きな経済的価値を生み出す地方再生ができる。

 これから日本に住み、あるいは訪れる外国人は増える。外国人の視点を学ぶことは、ものの考え方を知ることであり、「共生」につながる。外国と外国人を組み込んだ地域社会と経済の創出を進めてほしい。

 それぞれが単独で動いても影響力は限られる。そこで合力、つまり力の統一が必要となる。観光ひとつとっても、市町村よりも広域に描くことで集客力は高まる。

 一つ一つの観光資源の価値を高め、有機的に結びつけることにより、価値はさらに高まる。九州全体にもっと広げ、利用者の視点から、観光資源の発掘を拡充し、自由に企画された商品づくりの強化を期待したい。

 この意識が九州全体で共有され、本格的に実行されたとき、とてつもない力を発揮し始めるだろう。道州制のような機能が実質的に生まれるからだ。

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 東京五輪・パラリンピックは秋には終わる。その先の日本の国家ビジョンは何だろうか。福田康夫元総理が、昨年の文芸春秋2月号などで指摘した東京一極集中の是正構想が頭に浮かぶ。

 この構想に触れて、昔から語られてきたテーマではあるが、その時代性と緊迫性を理解できた。東京を地震が襲う可能性は高まっている。大天災を視野に入れた国家ビジョンの構想は不可欠だ。

 これこそ、九州が全体として取り組むべき課題だ。大災害発生時の複合的なプランをしっかりと共有してほしい。人命を守る。社会経済インフラを守る。九州の強靭(きょうじん)性を高める。計画と仕組み構築は重要だ。加えて東京が首都機能を低減させた際の、九州によるバックアップ体制の強化も具体的に検討してほしい。

 これらは九州全体で考え、体制をつくり、実施しなければ効果はない。日本全体の準備が整うのを待つ必要はない。覚醒した人、コミュニティー、地方同士で横の連携を取りながら進めてほしい。

 九州で動きがつくり出されれば、全国を動かす。後世の歴史は、九州がつくり出した「令和維新」と記録するかもしれない。大きな初夢だと思う人もいるだろう。だが、それを正夢とするのが、われわれ九州人なのだ。

 【略歴】1946年、福岡県太宰府市生まれ。修猷館高-京都大法学部卒。69年に外務省入省。中国課長、アトランタ総領事、ミャンマー大使、沖縄担当大使などを歴任。2006年から10年まで中国大使。著書に「日中の失敗の本質」など。 

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