正しい知識を-母親が児童に授業 菊池良和(九州大病院・吃音外来医師)

西日本新聞 医療面

吃音~きつおん~リアル(11)

 「皆さん『きつおん』っていう言葉を知っていますか? 話すときに繰り返したり、つっかえたりすることだけど、わざとではないんです。もしも、そんな話し方を笑ったり、まねしたりする友達がいたら『そんなことしないで』と伝えてね」

 小学5年生に話しているのは、担任でも、「ことばの教室」の教員でもありません。吃音(きつおん)のある男子児童の母親がクラスメートに「授業」をしているのです。入学時からもう5年目。毎年、子どもたちは「嫌なことがあったら味方になるよ」と好意的に受け入れてくれます。

 実は、このお母さんも最初から、吃音を客観的に捉えられていたわけではありません。3歳の息子に症状が見られ始めたとき、自分を責め、円形脱毛症になるほど悩みました。

 4歳で「吃音外来」を受診。私は「子どもの話し方を変えるのは難しいけど、周りの理解を深めることはできます」と伝えました。医師であり、当事者である私と話したことで、抱えていた罪悪感は軽減したと言います。

 私が作った当事者への接し方の資料を、通っていた保育園に渡してもらいました。すると、保育士たちから「吃音を誤解していた。お母さんの話を聞く勉強会をしたい」と依頼され、保育士や保護者向けにお話ししたそうです。

 勉強会の後、他の園児がまねしたり、「なんでそんな話し方をするの?」と指摘したりすることは減りました。吃音を隠さず、正しい知識と正直な思いを話すことが啓発につながると考えたお母さんは、小学校でも担任と話して、同級生たちに説明する機会をもらっているのです。

 吃音のある子どもへの接し方は決して難しくありません。言葉がつっかえても、指摘もからかいもせず、話している内容に注目するだけで十分です。

 親がわが子にできることは成長とともに少なくなっていきますが、こんな方法もあるのだと感じました。いずれは、本人が成長し、周囲に誤解されないように自分で伝える日が来るでしょう。 (九州大病院医師)

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