信仰の違い認め合う寛容さを【坊さんのナムい話・3】

西日本新聞 くらし面

 米国の一部の地域では、年末のあいさつとして「メリークリスマス」と言わなくなったと聞きました。クリスマスはイエス・キリストの誕生を祝う祭りです。他の宗教の人に対するあいさつとしては適当でないことから、代わりに「良い休日を過ごして」という意味の「ハッピーホリデーズ」を使うのだそうです。多様性を受け入れようとする、良い配慮の仕方だなあと感心しました。

 さてお寺の子どもたちにとって、この時期は我慢の時期でもあります。仏教はクリスマスを祝いません。幼い頃、このことを人に話すと「えー、かわいそう」なんて言われました。当時、親に「なぜうちにはサンタが来ないの」と聞いて困らせたものです。悲しそうな子どもと、自らの志す道との板挟みになるお坊さんが多く出現するのもこの時期です。お釈迦(しゃか)様が、出家者に家族を持たないように諭されたのも、こういうことを見越してなのかなとも思ったりします。

 私は仏教徒ですから家でクリスマスを祝いません。しかし街中がイルミネーションに輝いてクリスマスの装いになり、楽しそうにはしゃいでいる人たちを見ると「仏教の行事でもこれくらい盛り上がってほしいな…」とうらやましくなります。ですから負けじと、クリスマスっぽい仏教のポスターを作ったり、クリスマスツリーみたいな仏花をこしらえたりして、ひそかに仏教をアピールしています。

 年末は宗教に関わる行事が多い時期です。信仰の違いを理由に、クリスマスを祝わなかったり、初詣に行かなかったりすると、「堅いこと言うなよ」と否定されることもありました。

 状況に応じて信仰を柔軟に変化させることを「宗教に対する寛容さ」と考えている人は多いです。しかし本来の寛容さとは、考え方や慣習が異なっても「そっか、あなたの宗教ではそうなんだね」と違いを認め合い、相手の信仰を大切にすることではないでしょうか。そうした寛容さが、多様な人種と文化を受け入れようとする今の社会に求められていると思います。

 それでは皆さま、ハッピーホリデーズ!

 (松崎智海 永明寺住職、北九州市)

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