今年はねずみ年、と言われて「ねずみ男」を思いつく日本人は…

西日本新聞 オピニオン面

 今年はねずみ年、と言われて「ねずみ男」を思いつく日本人は、多くはないが確実にいるだろう。ねずみ男は水木しげるさんの漫画「ゲゲゲの鬼太郎」に登場する半人間、半妖怪のキャラクターだ

▼小さい頃「鬼太郎」を読んでいて、どうにも困ったのがこのねずみ男だった。善玉なのか悪者なのか、主人公の鬼太郎の味方なのか敵なのか、さっぱりわからないのである

▼お調子者で金に汚く、仲間をすぐ裏切る。その結果、鬼太郎をとんでもない窮地に陥れる。しかし次の回では、最初から鬼太郎たちの仲間のように振る舞っている。正邪二元論、勧善懲悪の漫画に慣れていた小学生には理解不能な存在であった

▼いるよなあ、こんなやつ―としみじみ感じたのは大人になってからだ。思えばこのねずみ男こそが、凡百の子ども漫画とは違う深みを「鬼太郎」に与えていた。子どもを子ども扱いせず、複雑で変なものを漫画の中に放り込んでくれた水木さんには感謝あるのみだ

▼その一方で今、心配になる。「お友達以外は全部敵」とばかりに野党に対しやたら攻撃的になる政治家や、とにかく壁を築き敵味方を分けようとする指導者に、ねずみ男の面白さが分かるだろうか、と

▼敵か味方かなどと簡単に決めつけない方がいい。白でも黒でもない、グレー(ねずみ色)がたくさんいるのが世の中なのだから。ねずみ男に託した水木さんの教えだと受け止めたい。

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