聞き書き「一歩も退かんど」(61) むなしい本部長謝罪 志布志事件冤罪被害者 川畑幸夫さん

西日本新聞 オピニオン面 鶴丸 哲雄

 志布志事件の12人全員無罪判決は、国を揺るがす大ニュースとなりました。鹿児島県警には全国から批判が集中。鹿児島地検は2007年3月8日、控訴断念を表明しましたが、当たり前です。一審であれだけ明確に被告のアリバイが認められ、自白調書の信用性が葬り去られたのに、公費を新たに使う控訴など許されるはずがありません。

 この日、警察庁は当時の県警本部長だった稲葉一次関東管区警察局総務部長を本庁に呼び、長官が直接、厳重注意しました。全国の警察本部に緊急通達も出し、「極めて社会的反響の大きい判決が下された」と適正捜査を求めました。

 その内容は(1)供述内容を吟味せよ(2)裏付け捜査を尽くせ-など。裏を返せば志布志事件は、私たちの真実の証言に一切耳を貸さず、裏付け捜査で得られた都合の悪い事実には全て目をつぶったから起こったということ。県警の捜査はまさに「暴走列車」でした。

 その県警もこの日、志布志事件での処分を発表しますが、開いた口がふさがりませんでした。当時の県警本部捜査2課班長(I警部)と志布志署生活安全刑事課長を本部長厳重注意処分にしただけ。指揮官だった志布志署のK元署長は既に2月26日付で退職しており、「責任はあるが、身分がない」という訳の分からない理由で、不問とされたのです。退職金も丸々受け取ったはず。全て私たちの税金ですよ。腹に据えかねます。

 そして、県警トップである久我英一本部長は19日の記者会見で、ようやく志布志事件での謝罪の言葉を述べました。

 「被疑者、被告人であった皆さんと、そのご家族には、結果としてご負担をおかけし、申し訳なく思っています。本部長として改めておわび申し上げます」

 「結果として」とは「そんなつもりはなかったけれど」という意味ですかね。ありもしない事件で無理やり私たちを犯人に仕立て上げようとしておいて、虫がよすぎはしませんか。

 さらに、私たちに直接謝罪する考えがないことも明かしました。なぜ偉い人は「うちの者が悪いことをしました」と素直に頭を下げられないのでしょう。組織を守るため? メンツが大切だから? 謝罪もむなしく響きました。

 この頃、志布志事件の発端となった4年に1度の統一地方選が近づいていました。妻のいとこで無罪を勝ち取った中山信一が雪辱を期し県議選に挑むのです。 (聞き手 鶴丸哲雄)

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