なぜ立春に新酒を販売? 縁起良く生酒楽しめる貴重な日に

西日本新聞 ふくおか都市圏版 後藤 潔貴

 毎年、立春の日に搾り立ての日本酒を販売する酒造元があるという。出来たてのフレッシュでフルーティーな味わいが受けて、全国で毎年、大勢のファンが立春を楽しみにしているとか。2月4日の立春を前に、福岡県内で唯一製造している小林酒造本店(福岡県糟屋郡宇美町)を訪ねた。商品は「立春朝搾り」のラベルが貼られた「萬代 純米吟醸 生原酒」。なぜ立春なのか。その人気の秘密とともに探った。

 「さながらワインのボージョレヌーボーのように、今年の出来はどうだろうとお客さんに楽しんでもらえる、蔵元にとっても特別な酒ですね」

 清酒「萬代」の醸造元として知られる小林酒造本店が立春朝搾りを2001年から造り始めて、今年でちょうど20年目。営業部長の壺井直純さん(53)は「顧客と話が膨らむ酒」として造り続ける意義を語った。

 立春朝搾りは日本名門酒会加盟の蔵元が立春の日の朝に、火入れをしない生酒を全国で一斉に出荷する限定品。通常は生酒でも搾ってから店頭に並ぶまで1週間以上かかるが、立春朝搾りは、搾りたての生酒を当日のうちに飲める貴重な機会とあって、毎年大勢のファンが、立春の縁起物として押し掛け、年々人気が高まっているという。

 全国では1998年から続いていて、令和初となる今年は全国44の蔵元が、720ミリリットル換算で30万本を販売する予定だ。小林酒造本店では昨年12月20日から仕込みを始め、現在は4300リットルが入るタンク四つで発酵が進む。酒米は県産の山田錦と夢一献を計6トン使用。これで約1万リットルの酒ができる。今季の酒米は高温障害も見られず、発酵が進みやすい良い米という。

 「実は杜氏(とうじ)泣かせの酒。大吟醸より気を使う」と話すのは、杜氏で製造部長の平田慎一さん(58)。もろみを搾る2月4日にタイミングを合わせるのが至難の業で、タンクがある蔵は空調設備で7~8度に保ち、タンク側面は中を冷水が流れる冷却シートで包み、もろみの温度を0.5度刻みで管理する。発酵最盛期で9~10度がベストだ。

 平田さんを含む6人の蔵人が世話を続けるもろみは、ぽこぽこと泡を出しながら発酵が進んでいた。リンゴのようなバナナのようなフルーティーな香り。「今年の酒は例年になく搾りたてらしい荒々しさを出すつもり」と平田さん。具体的には企業秘密だが、ろ過方法を見直して、フレッシュさを前面に押し出すとか。「評価は分かれるかもしれないけれど、それも一発勝負の酒造りの面白さ。当日が楽しみです」

 720ミリリットル1760円、1800ミリリットル3520円。すべて予約販売。取り扱い酒店は日本名門酒会HPで確認できる。問い合わせは小林酒造本店=092(932)0001。

(後藤潔貴)

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