未来のコトのデザイン 大串 誠寿

西日本新聞 オピニオン面

 昨年、北大西洋条約機構(NATO)は創設70年を迎えた。この軍事機構が発足したのは1949年4月。その3カ月前のトルーマン米大統領の就任演説には、次の表現がある。「安全を強化するためにデザインされた共同協定」(a joint agreement designed to strengthen the security)。

 当時は発足していなかったNATOを指す表現だが、デザインの語が制度設計の意味で使われている。少々大仰だが、安全保障体制もまた「デザイン」されたものだった。

 日本でデザインと言えば、もっぱらモノの造形と理解されているが、本来欧米では制度を構想したり、予定を計画することも「デザイン」の語で表す。この広義の「デザイン」が、近年日本で「コトのデザイン」として広がりをみせている。自動車産業を例にとれば、新型車開発などが従来の「モノのデザイン」であり、「コトのデザイン」は官民協同によるカーシェアリング制度づくりなどを指す。コトのデザインは交通渋滞や大気汚染など、より大きな社会問題の解決を目指す。

 日本ではモノを対象とするデザインが普及したが、モノとコトの両方を扱うデザイン理念は、福岡市に開学した国立九州芸術工科大(現・九州大芸術工学部)によって68年に誕生していた。この考えを主唱したのは初代学長で造形理論家の小池新二氏である。行政や企業をコーディネートして展開する社会活動こそ今後期待される「デザイン」であるとして、今日を予言した。

 九州大芸術工学部は創学53年目を迎える2020年度から「未来構想デザイン」コースを新たに設ける。技術社会の進展を見据え、コトのデザインに正面から取り組む。

 「未来」と聞くと空想的な印象を受けるが、近年のインターネットや人工知能(AI)の発達で、かつての未来は現実として姿を見せつつある。総務省が組織した「未来デザインチーム」が一昨年4月に公表した中間まとめは、空飛ぶ自動車や人型ロボットが実現する日本社会を提示している。未来を展望することはもはや今日的課題だ。

 未来デザインには、豊かな構想力が必要だが、副作用を回避する深い洞察力も求められる。飛行自動車には新しい安全策が必須だし、ロボットには共存の仕組みが必要だ。副作用を最小化することが、最重要課題だとも言える。

 71年前に「デザイン」されたNATOは西側の安全保障に寄与したが、東西冷戦構造を際立たせる副作用ももたらした。 (写真デザイン部次長)

PR

社説・コラム アクセスランキング

PR

注目のテーマ