生ごみ分別で「食品ロス」抑制 福岡県大木町とみやま市の取り組み

西日本新聞 くらし面

住民が回す「食」循環の輪

 大切な食べものが廃棄物になってしまう「食品ロス」。製造サイドの作り過ぎやそれを助長する流通の仕組みを改善して減らす努力を怠り、発生する生ごみが増えれば、焼却場の建設・運用コストや、焼却の際に排出される二酸化炭素(CO2)や有害物質、焼却灰の処理などの問題も生じて次世代への負の遺産となる。こうした中、福岡県大木町とみやま市で、生ごみを資源として活用する取り組みが展開されている。

 大木町の集落の一角に置かれた大型の収集たる。近所に住む主婦、古閑清美さん(60)が、手慣れた手つきで、そのふたを開け、自宅から持ってきた小型の専用バケツの中の生ごみを放り込んだ。

 家庭から出る可燃ごみのうち、重量比で3~4割を占めるとされる生ごみ。大木町では、生ごみだけを分別回収しているのだ。

 密閉式の専用バケツは、生ごみの腐敗を遅らせるため、水切りできるよう工夫されている。とはいえ、分別して一時的にためておく手間は、町民にとってはいかにも面倒そう。

 だが古閑さんは「慣れよ、慣れ。この方が衛生的だし、ビニールの袋のようにカラスや猫に荒らされることもない」ときっぱり。「最近引っ越してきた人は面倒かもしれないけど、こうするもんだと思っている町民からすると、なんで分けて捨てないの、という感じだと思う」と続けた。

 同町で生ごみの分別収集が始まったのは2006年。記者は同じ疑問を複数の住民にぶつけたが、返事は同じで、生ごみの分別収集はもう「文化」になっているようだった。

福岡県大木町が取り組んでいる「生ごみ循環事業」の仕組み

 同町の生ごみ循環の仕組みはこうだ。

 核となるのは、町の中心部にあるバイオガスプラント「おおき循環センター・くるるん」。それぞれの地域ごとに週2回、ここから回収たるを積んだトラックが夕方、10世帯に1個の割合で集落の収集ポイントに配置していく。住民はたるが回収される翌朝までに自宅の生ごみを入れる。

 くるるんでは、生ごみから、ラップ類やプラスチックなどの異物、卵の殻や玉ネギの皮など肥料化の妨げになるものを除くなどした上で、し尿や浄化槽汚泥と混ぜてメタン発酵槽に投入。すると1カ月後、それらは微生物の力で液体肥料(液肥)とバイオガス(エネルギー)に変わるのだ。

 液肥の生成量は年間5500トン。「くるっ肥」と名付けられ、ミネラルたっぷりの有機質肥料として町民に無料で還元される。農家向けには、安価(10アール当たり千円)で散布を請け負う仕組みもあり、液肥が余ることは一切ない。

 くるっ肥を使って栽培された農産物は直売所などを通じ、再び町民の台所へ。減農薬減化学肥料の「特別栽培米」は、小学校の米飯給食(週4回)のほか、一般より安い価格で町民に提供されている。

浮いた費用を町民に還元

 現在、こうした形で回収されている生ごみは、家庭系と事業系を合わせて年間1200トン。10年には廃プラスチックと草木、11年には紙おむつと、さらなる分別回収に取り組んだこともあり、18年度の可燃ごみの量は1135トンと、05年比で38・5%にまで減少し、可燃ごみの収集回数は週2回から1回に減った。

 コストはどうか。

 メタン発酵のプラントは仕組みが簡単なので、同規模のし尿処理施設などに比べると、建設費、維持費ともに8割以下。ごみの収集運搬などの処理経費も、分別回収の実施前と比較すると、年間平均で約3千万円の節減となっている。

 面白いのは、浮いた費用を町民の要望が強かった図書館・文化施設のリニューアルや、小中学校のエアコン設置などに充てたこと。「すべては町民の協力によってできたことなので、町民の目に見える形で還元したかった」。07年から昨年まで町長を務めた石川潤一さん(66)は言う。

 多くの自治体ではいまだに生ごみは焼却処理が一般的だ。なぜ大木町は、こうした「食」を巡る健全な循環が定着したのか。続きは次回に。(佐藤弘)

福岡県大木町 人口1万4200人。町全体が標高4~5メートルの田園地帯で、町の総面積の約14%を堀(クリーク)が占める。主産業は農業で、キノコの生産量は九州一。

PR

くらし アクセスランキング

PR

注目のテーマ