豚コレラ流行 九州上陸に警戒を怠るな

西日本新聞 オピニオン面

 中部地方を中心に広がっている家畜伝染病の豚コレラ(CSF)が、海で遠く隔てられた沖縄県に飛び火した。きのうも新たな感染が確認され、収束の見通しは立っていない。

 国内では26年ぶりとなる飼育豚への感染が、岐阜県で確認されたのは2018年9月だ。その後、愛知や埼玉など関東・中部各県へと広がっていった。

 主な感染源は山中を移動する野生イノシシなどと推測されている。しかし、離島の沖縄で発生したことで、全国どこで感染が確認されてもおかしくない新たな局面に入ったと言える。国は感染経路の解明を急ぎ、防疫対策を立て直す必要がある。

 とりわけ、畜産が盛んな九州への感染拡大は、絶対に阻止しなければならない。

 豚の飼育頭数は鹿児島県が全国1位、宮崎県は2位で、2県で全国の2割を占める。南九州で感染が広がれば、地場畜産業への打撃だけでなく全国的な影響も計り知れない。

 宮崎県では10年、牛や豚に伝染病の口蹄疫(こうていえき)がまん延し、甚大な被害が広がった。悪夢のような災いが二度と起きないよう、行政や畜産農家は危機意識を最高レベルに引き上げ、あらゆる防疫策を講じるべきだ。

 豚コレラは豚やイノシシ特有のウイルス性伝染病で、発熱や食欲減退などを引き起こす。感染力が強く、致死率が高い。

 感染を防ぐには、イノシシ防護柵の設置や農場(畜舎)に出入りする際の消毒、生肉を含む可能性がある飼料の加熱処理などが有効とされる。まずは、畜産農家がこうした対策を徹底することが肝要だ。

 その上で、感染拡大の防止には早期の発見と通報が欠かせない。畜産農家は発熱や下痢などの異常に気づいた場合、速やかに自治体に通報してほしい。

 国は昨秋、感染リスクが高い地域を指定し、豚へのワクチン接種を認めた。接種すれば感染豚の発見が困難になり、輸出入にも悪影響を及ぼす可能性もある。それでも、優先すべきはまん延を食い止めることだ。感染が確認された都道府県は畜産業者と協議を進め、対策の一つとして接種も検討すべきだろう。

 中国と韓国では致死率が非常に高く有効なワクチンもないアフリカ豚コレラ(ASF)が流行している。手荷物として日本に持ち込まれた豚肉ソーセージなどからウイルス遺伝子が検出されている。空港や港湾など水際での防疫強化も欠かせない。

 豚コレラは人間には感染しない。ワクチンを接種された豚の肉を食べても、安全性に問題はない。風評被害を広げぬよう、私たち市民も正しい知識を持つ必要がある。

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