斜面地減災へ、居住制限対象1万人 北九州市が市街化区域見直し

西日本新聞 一面 竹次 稔

 北九州市は、災害発生の危険性がある斜面住宅地を減らすため、都市計画区域の「線引き」を見直し、居住を制限する第1次候補地に八幡東区の約292ヘクタールを選んだ。対象市民は約1万人、建物は約5400棟に上る。人口減にあえぐ中、将来的にインフラを整備する地域を絞り込む狙いがある。全国でも例のない都市再生の手法として注目されるが、資産価値の下落などの不安を抱く住民は多いとみられ、地元との合意形成は難航が予想される。

 今回の対象は同区南側で、山あいの地域に加え、主要な県道から数百メートルの斜面地もある。具体的には、都市開発が可能な都市計画法上の市街化区域を、住宅の新築など新規開発を抑制する市街化調整区域に編入する。住民は住み続けることは可能だが、再開発や新築は制限される。

 市は2月以降、八幡東区の対象地域で住民説明会を開き、合意形成をした上で正式に決めるとしている。住民側がどのような意思表示をすれば「合意形成」とみなすのか、といった詳細は決まっていないという。市内のほかの6区についても、2020年度中にエリアを絞り込む。

 検討が始まったのは18年7月の西日本豪雨の際、同市門司区の斜面住宅地で土砂崩れが起きたことがきっかけだった。

 同年12月の都市計画審議会で、区域区分を見直す独自の選定基準について検討を開始。「安全性」「利便性」などの視点から12指標を用いて地域を大まかに選んだ。さらに「車で寄り付きが難しい」「人口密度が低く、空き家が多い」など三つの観点で現地調査し、昨年末に絞り込んだ。対象地域の292ヘクタールは八幡東区の面積の約8%に当たる。

 市は都市計画法に基づく都市計画区域見直しの手続きについて、20年度から国や県と協議し、21年度末に見直し案を決める意向だ。

 国土交通省は「住民が暮らす地域を、大規模に市街化調整区域に編入する取り組みは全国的に例がなく、先進的だ」(都市計画課)としている。 (竹次稔)

■都心集積、住民理解が鍵

 北九州市が居住制限の対象に選定した候補地は、災害の恐れがある山あいだけでなく、人口減が進む中心部に近い地域も含まれる。前例のない「実験」に乗り出す背景には、コンパクトシティーの実現に本腰を入れなければ将来、地域が成り立たなくなるという危機感がある。多くの自治体が同じような課題と直面している。住民の生活に直接関わるだけに、丁寧な説明が求められる。

 北九州市は転入者から転出者を差し引いた「社会減」が近年、全国上位となっている。2045年には人口が現在より約16万人少ない約77万人にまで減るとの推計がある。

 都市計画区域の「線引き」の見直しは、結果的にインフラが整った中心部への居住を促し、おおむね30年後をめどに空き家率が高い対象地域の無居住化、更地化を緩やかに進める狙いがある。将来的にインフラを整備する場所は絞られ、地域全体の持続可能性が高まることになる。

 問題は、住民の理解をどう得るかだ。

 市街化調整区域に編入された場合、都市計画税の支払い義務はなくなる一方、資産価値の低下などが懸念される。市都市計画課は「住み替えを積極的に推進するものではない」としているが、仮に住民が移住を希望した場合の支援策は具体的に決まっていない。ある地元市議は「広く住民の理解を得るのは簡単ではない」と懸念する。

 東京工業大の中井検裕(のりひろ)教授(都市計画)は「北九州市の取り組みは大変踏み込んでいる。都市計画区域の線引きを見直した後も、地域が縮小する中でどのような街をつくっていくのか、常に住民と行政が話し合っていく必要がある」と指摘している。

福岡県の天気予報

PR

福岡 アクセスランキング

PR

注目のテーマ