芥川賞、直木賞 受賞の決め手は 選考経過詳報

西日本新聞

 15日に選考会が開かれた第162回芥川賞、直木賞(日本文学振興会主催)は、芥川賞は古川真人さん(31)=福岡市出身=の「背高泡立草(せいたかあわだちそう)」、直木賞は川越宗一さん(41)の「熱源」に決まった。芥川賞の島田雅彦さん、直木賞の浅田次郎さんの選考委員会見を通じ、両賞の選考経過を詳報する。

◆芥川賞 古川真人さん「背高泡立草」 歴史的な重層性をすくいあげた

【芥川賞候補】▽木村友祐「幼な子の聖戦」▽高尾長良「音に聞く」▽千葉雅也「デッドライン」▽乗代雄介「最高の任務」▽古川真人「背高泡立草」 

 全体的にかなりシビアな評価で、重苦しい空気が漂った。それでも活発な議論が尽くされ、受賞作なしという最悪の事態は避けられた。作品はそれぞれ非常に個性的で、たくらみが秘められ、評価にはかなりばらつきがでた。

 最終的な投票には古川真人さんの「背高泡立草」と千葉雅也さんの「デッドライン」、木村友祐さんの「幼な子の聖戦」が残った。古川さんが選考委員8人のうち半数の票を得て、△をつけていた選考委員の「では○にする」という鶴の一声で決まった。

 古川さんは土地に根付いた歴史的な重層性を巧みにすくいあげ、単純な草刈り作業の合間に時空を越えたエピソードを織り込んだ。これまでの作品とは毛色が変わり時間的な複層性が広がったが、現在の草刈りと歴史的な部分の関連付けが弱いという指摘もあった。平戸という土地は歴史的な重層性という意味では素材に事欠かない。台湾や隠れキリシタンなど、今後の小説世界をもっと大きなものにしていく期待もある。

 千葉さんの作品は一種のカミングアウト小説。LGBT(性的少数者)を題材にした小説は多くの人が手がけるようになっている。多様なアイデンティティーや、哲学者ドゥールーズの生成変化を軸にした私の発見という設定に評価は高かったが、自伝的小説という定型をはみだすパワーを持っていたかについては否定的な意見があった。

 木村さんの作品は政治と性をめぐる風刺的な批評がふんだんに盛り込まれ、ある意味タイムリーで、私はそこを買った。エンタメ的な面白さには賛否があったほか、主人公のテロリズム行動に至るモチベーションがいまひとつ足りないことについて議論になった。

 乗代雄介さんの「最高の任務」は亡くなった叔母さんや家族のセンチメンタルな思い出を描いたが、手法自体が目的化し、テーマと手法に乖離があるのではという意見があった。

 高尾長良さんの「音に聞く」はペダンチック(学者的)なスタイルに否定的な意見が多く、最初の投票で極めて厳しい評価になった。

【芥川賞選考委員】小川洋子、奥泉光、川上弘美、島田雅彦、堀江敏幸、松浦寿輝、宮本輝、山田詠美。吉田修一(今回は体調不良で欠席)(五十音順、敬称略)

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