芥川賞、直木賞 受賞の決め手は 選考経過詳報 (2ページ目)

◆直木賞 川越宗一さん「熱源」 近年まれに見る大きなスケール

【直木賞候補】▽小川哲「噓と正典」▽川越宗一「熱源」▽呉勝浩「スワン」▽誉田哲也「背中の蜘蛛」▽湊かなえ「落日」

 初候補が5人中4人で混戦が予想されたが、最初の投票で川越宗一さんの「熱源」が一歩抜きんでた。2回目で小川哲(さとし)さんの「嘘(うそ)と正典」、誉田(ほんだ)哲也さんの「背中の蜘蛛(くも)」、湊かなえさんの「落日」を合わせた4作が残って激論が交わされ、最終的に川越さんの作品に決まった。

 川越さんの作品はアイヌ民族の解釈が優れているという意見と、逆に少し考えが足りないのではという声があった。しかし近年まれに見る大きなスケールで小説世界を築き上げ、登場人物も生き生きと魅力的。相当難しい資料を駆使して自分なりに再生産した。

 近年は小説を表現方法のひとつとするような軽い人も多い中、川越さんは志が高く確信的に小説家を目指している。長編2作目での受賞となり「良い作品なのでキャリアに関わらず取らせよう」という意見のほか「一度ここで足踏みした方が今後の世界が広がるのでは」という声もあった。

 次点は小川さんの作品。発想が豊かでユニークだが経験が足りない分、発想がストーリーテリングに結びつくにはまだ足りないところがある。すごい天才だと思うが直木賞には普遍性や大衆性、分かりやすさも必要ではないかと思う。

 誉田さんの作品は多く書いて来た人ならではの、ページから漂い出てくる力がある。警察小説としては説得力があるがITのシステムはよく理解できず、ITに詳しい選考委員からは「このシステムは時代遅れでは」という意見もあった。

 湊さんは4回目の候補作で、作品が売れ支持者がいるということで最終投票に入った。小説的な構成をきっちり持ち今までより完成度が高いという意見もあったが、まだ文章がくどい、分かりづらいなどの意見が出て得点が伸びなかった。

 呉勝浩さんの「スワン」は先に映像ありきで、小説のスタイルを取っていないのではないかという意見が多かった。そして多くの人間が死んでしまうからには、作家自身がそれだけの苦悩を背負わなければならないと思うが、そのことに配慮していないという点で私は否定的だった。

【直木賞選考委員】浅田次郎、伊集院静、角田光代、北方謙三、桐野夏生、髙村薫、林真理子、宮城谷昌光、宮部みゆき(五十音順、敬称略)

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